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電通グループのデジタル領域3社が描く、DXの最前線(PR)

国内初の自動車正規ディーラーEC「岡山ダイハツ みらい支店」が語る、ゼロスタートから内製化までの道筋

 コロナ禍でますます加速したEC化の波は業界を問わず広まり、サービス向上に向けた運用体制の改善も、大きな課題として注目されている。岡山ダイハツ販売では、2020年に電通グループの支援を得ながら、新車のオンライン販売の窓口として「岡山ダイハツ みらい支店」をオープン。刻々と変化する消費者の多様な自動車利用ニーズに対していち早く新たな選択肢を示した。本稿では、みらい支店立ち上げから内製化までの過程について各社担当者を取材。自動車ECという手法を介した、新たな生活者との向き合い方について話を伺った。

岡山ダイハツ みらい支店の立ち上げを顧客体験設計から支援

MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは、皆さまの自己紹介と業務領域についてお聞かせください。

田中:岡山ダイハツ販売の田中です。

 2008年に新卒で入社して以来、本社にて自動車保険や周辺商品、バリューチェーン関連の販売支援業務に就いておりました。2度の産休や部署異動などを経て、2019年頃から岡山ダイハツ みらい支店(以下、みらい支店)の業務に携わるようになりました。グランドオープン後は、正式にみらい支店の主担当となり現在に至ります。

森:岡山ダイハツ販売の森です。

 私は2018年入社で、最初の2年間、野田店で営業スタッフを経験した後、2020年4月にみらい支店へ配属となりました。営業経験を活かし、AIチャットボットに商談や接客知識を入れ込む仕事や、サイト制作業務、SNSの運営などに従事しております。

岡山ダイハツ販売株式会社 総合企画本部 総合営業企画部 みらい支店 係長 田中はるな氏、同支店 副主任 森彩華氏
(左から)岡山ダイハツ販売株式会社 総合企画本部 総合営業企画部 みらい支店 係長 田中はるな氏、同支店 副主任 森彩華氏

佐々木:電通デジタルの佐々木です。

 2015年に電通デジタルの前身であるネクステッジ電通に中途入社し、2020年頃までデジタル広告領域のアカウントマネージャーを務めておりました。自動車関連のクライアント様を長らく担当しております。

 2021年よりビジネストランスフォーメーション部門に移り、カスタマーサクセスを実現するためのコンサルティング支援を行っています。岡山ダイハツ販売様とは、みらい支店の立ち上げ当初からお仕事させていただいております。

和田:電通デジタルの和田です。

 事業会社にてECサイトの店長業務に従事した後、制作コンサルの会社へ転職。10年以上WebディレクターとしてECに関わってきました。電通デジタルへの入社は2019年です。コマース部門へ配属されて以降、WebディレクターとしてECサイトの制作案件に携わっている状況です。

株式会社電通デジタル ビジネストランスフォーメーション部門 カスタマーサクセス第2事業部 佐々木直美氏、同社 コマース部門 コマースディレクション事業部 和田圭司氏
(左から)株式会社電通デジタル ビジネストランスフォーメーション部門 カスタマーサクセス第2事業部 佐々木直美氏、同社 コマース部門 コマースディレクション事業部 和田圭司氏

みらい支店を「新たな顧客接点のためのプラットフォーム」として活用

MZ:「みらい支店」とはどのような店舗なのでしょうか。概要や立ち上げの経緯についてお教えください。

田中:弊社では「より軽やかな岡山へ。」というスローガンを掲げており、コンパクトカーを通じて、岡山に住むすべての人が暮らしやすくなることを目指しています。

 みらい支店は、このスローガンを体現するために立ち上がった、お客様に車の新しい買い方をご提案するプロジェクトです。

岡山ダイハツ みらい支店
岡山ダイハツ みらい支店

田中:立ち上げ自体はコロナ以前の2019年頃から始まりましたが、オープンが迫るタイミングでどんどんコロナ禍の影響が強くなり、結果として非対面・非接触型の販売という選択肢の重要性が高まった状況下でのスタートとなりました。

MZ:岡山ダイハツ販売のECサイトがみらい支店ということでしょうか。

森:どちらかといえば、オンライン上でお客様との接点を持つための、プラットフォームとして認識しております。

 たとえば、来店予定のお客様が事前の下調べに利用したり、来店時、モビリティライフアドバイザー(営業職)と話しながら参考コンテンツとして利用したりと、オフラインとオンラインをつなぐような役割です。もちろんご注文の受付から納車前まで、オンライン上で購買プロセスが完結するケースも含みます。

 コロナ禍の影響で直接の対面接客が難しくなった状況で、お客様とのコミュニケーションを補完するような役割も担っています。私が担当している、24時間365日受け付け可能なAIチャットボットも、オフラインとオンラインをつなぐ重要な接点です。

自動車EC参入の障壁は「どこをデジタル化するのか/しないのか」

MZ:自動車のオンライン販売は国内において非常に新しい取り組みですが、立ち上げ当時どのような想いがありましたか。

森:世間的に見ても、自動車ディーラーによるオンライン販売は国内初でしたので、ネットで車が売れるのか、そもそも本当にサービスを立ち上げられるか、という心配はありました。

田中:車のような高額商品をネットで買うのは、結構勇気がいるなあ、と。ディーラーとしても、一消費者としても、両方の目線で不安は感じていましたね。

田中:社内にはデジタルに慣れていないスタッフもおりますので、そういう方に受け入れてもらうのは難しかったです。不安や疑問を解消し、みらい支店を始めた理由などを知ってもらうため、定期的な情報発信や勉強会などは、当時から現在に至るまで続けています

MZ:支援企業の立場から見て、自動車メーカーやディーラーのオンライン販売があまり広がっていない理由についてお聞かせいただけますか。

佐々木:購入決定から納車までの時間的なギャップの長さとプロセスの複雑さが、理由として考えられると思います。オプションの選択、ローン審査、新車登録など、ディーラー側だけでは完結できない業務も多く、全てをデジタル化した完全なオンライン販売を実現するにはもう少し時間がかかると感じています。このあたりの煩雑さが導入の障壁になっているのではないでしょうか。

 とはいえ、現在の自動車業界は、100年に一度の大変革時代であるといわれています。カーシェアリングの需要が伸びる一方で、コロナ禍を経てマイカーの需要も再び高まりつつあります。刻一刻と変化するニーズに応えるため、新たな販売モデルやチャネルの見直しが必要不可欠なのでは、と考えています。

幅広いラインナップには膨大な商品ページが必要。コスト削減のためゼロから内製化

MZ:みらい支店立ち上げから2周年に向け、運用の自走・内製化を推進されてきたと伺いました。アウトソーシングに頼らない体制づくりを目指した理由をお教えください。

森:大きな理由として、コストの削減があります。チームで話し合う中で、あれをしたい、これをしたいとアイディアが出る一方、費用が足かせとなる場面が多々ありました

 たとえば、自動車のカラーとグレードについてです。みらい支店では、お客様の利便性を考慮し、1つの車種に対し、グレードとカラーと支払いコースの組み合わせ毎に商品ページを作成しております。それぞれ総額が異なるため、トータルで考えるとかなりのページ数が必要なため、その分制作コストにも影響が出てきてしまいます。

 外注費用の都合で断念するのは避けたいため、弊社でできそうな部分を内製化することで実現できないか、と考えました。

楽天市場の商品ページ例。グレードとカラーによってページが分かれる
楽天市場の商品ページ例。グレードとカラーによってページが分かれる

森:また、年によっては商品の仕様変更や金額調整が頻繁に発生します。

 ページ修正の度に、細かい要望を外注先に指示するのは煩雑なため、軽微な案件は自分達で対応したい、という理由もありました。

MZ:自走化への具体的な取り組みについてお教えください。

田中:そもそも、ECサイトの運営に関する知識が何もない状態からのスタートです。どこから手を付けていいかわからなかったため、「どんなPCを買えばいいですか」「必要なソフトは何ですか」など、基本的な設備について和田さんに伺うところから始めました。

 その後は、HTMLやCSS、illustratorやPhotoshop習得のため、5ヵ月間ほどオンラインスクールを受講しています。

 楽天市場の運用については、和田さんが作成してくださったマニュアルで学習しました。

森:実際の管理画面のキャプチャーがふんだんに使われた、教科書のように丁寧でわかりやすい内容です。そのマニュアルを使ってオンラインと対面両方で授業も行っていただきました。録画した授業動画を繰り返し見て勉強しましたね。

専用のマニュアルまで作成。ほぼすべての作業が自走可能に

MZ:岡山ダイハツ販売さんの内製化の取り組みにおいて、電通デジタルではどのような支援を行ったのでしょうか。

佐々木:電通デジタルとしては、主に2つのサポートをさせていただきました。

 1つはダッシュボードの更新作業の移管です。このダッシュボードは、みらい支店の販売実績から集客やコンバージョン状況など、様々な分析軸を持つBIツールで、岡山ダイハツ販売のみなさんと電通グループとの定例会でも使用をしているのですが、元々我々が更新作業も含め提供しておりました。

 岡山ダイハツ販売様で作業をいただくにあたり、搭載データの更新作業を簡易化したり、機能を利用頻度によって取捨選択したりと、なるべく効率良く管理できるように改良しています。

 ご自身で作業を行っていたくことで、ちょっとしたデータの変化にも気づくようになり、分析結果から考察や仮説立案など、マーケティング活動におけるアクションにつなげていただけたのではないでしょうか。

電通デジタル作成のマニュアル表紙(左)とページ例(右)
電通デジタルが作成したデータ分析マニュアルのページ例

和田:もう1つは、先ほど田中さんに仰っていただいた、楽天市場のページ制作についてのサポートです。電通デジタルで行っていた作業を難易度別に分類し、簡単なものから順次マニュアルを作成してレクチャーさせていただきました。

 現在では、ページデザイン変更などの難しい作業を除き、カレンダー更新やバナーの差し替え、金額が異なる類似ページの量産など、ほぼすべての作業を岡山ダイハツ販売様側で対応いただいています。

MZ:電通デジタルのサポートを経て、現場ではどのような成果が得られているのでしょうか。

田中:価格や納期の変動に合わせた文字修正からオプションの仕様変更時や売り切れの際にすぐに画像を差し替えるなど、迅速な対応ができるようになりました。また、サイト上でできることの幅が理解できたことで、企画の具体性や精度が上がりました。上司への提案も通りやすくなったと思います。

森:内製化によってコンテンツが充実した結果、店頭における商談時間の削減といった効果が得られています。みらい支店にある商品情報や動画コンテンツなどを営業ツールとして活用することで、通常2時間程度かかる商談が50分で終わった、というような報告も上がっています。

内製化後も専門領域における後方支援を継続

MZ:2022年7月にみらい支店開設2周年を迎えるにあたり、今後どのような挑戦や取り組みをしていきたいかご教示ください。

田中:人気のグレード、カラー、オプションを組み合わせたパッケージを販売しているのですが、店頭で人気のある車種と、みらい支店でよく閲覧されている車種が必ずしも一致しないことがわかりました。今後はデータ分析をさらに重ね、みらい支店独自のお客様に喜んでいただけるパッケージを展開していきたいと思っています。また、2周年に向けて、特別企画も進めている状況です。

森:AIチャットボットをさらにレベルアップさせたいです。

 お客様がフリー入力で質問できるタイプのチャットボットなので、まだ答えられない質問をいただく場面があります。質問と回答はすべて自分達で入力できるため、どんどん学習させてAIの精度を高めていく予定です。

 いずれは、自動車販売に関する質疑応答だけでなく、岡山の情報発信などでも活用できればと考えています。

MZ:岡山ダイハツ販売さんの展望に対して、電通デジタルとして今後どのような価値提供ができるとお考えでしょうか。

佐々木:内製化のお取り組みについて、基本的な店舗運営やデータ分析などは、ある程度自走できる状態にまで到達されたと考えています。

 今後、田中様や森様が、企画の立案や推進に専念いただける様、専門的な課題は巻き取らせていただきつつ、当社が培ってきた顧客体験設計のノウハウを還元するようなご支援を続けたいと思います。

和田: 当社の強みは、制作、コンサルに関わらず、EC全般に関する最新知見の吸収が早い点です。情報のアウトプットや技術的に高度な領域を当社が担うことで、岡山ダイハツ販売様がみらい支店の発展に集中いただけるよう、今後も継続的にご支援させていただきたいです。

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この記事の著者

坂本 陽平(サカモト ヨウヘイ)

理系ライター、インタビュアー。分析機器メーカー、国際物流、商社勤務を経てフリーランスに。ビジネス領域での実務経験を活かし、サイエンス、ODA、人事、転職、海外文化などのジャンルを中心に執筆活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/07/11 10:00 https://markezine.jp/article/detail/39193