フレームワークを実務に活かすためには
──これまで多くの企業でパーセプションフロー・モデルの導入・活用を支援されてきた経験から、フレームワークを活かせる人と活かせない人の違いは、どこにあると思われますか?
1つは、「ちゃんと自分で“考えて”使う」ということです。多くのフレームワークは、枠組みの中に書き込む形になっていると思います。特に、「働きかけ方」を示すフレームワークのほうは、こういったタイプが多いですよね。そこでは、考えるときの順番は示してくれているのですが、あくまで“考える”のは自分なんです。それっぽいことを書き込んだら、どうにかなるというものではありません。
もう1つは、「すぐに改造しようとしない」ということ。基本形を改造することがダメなわけではないのですが、まずは基本形に忠実にしっかり習熟するほうが役に立つと思います。実は、パーセプションフロー・モデルも改造されがちなんです。ですが、先ほどもお話ししたように、たくさんの時間と手間と予算をかけて現在の形にたどり着いていて、私以外にも何十もの手練れのマーケターが寄って集って作ってきたものなので、1回や2回で不具合が起きるようなところは、既に概ね手当されていると思います。パーセプションフロー・モデルに限らず、名の知られたフレームワークも同様でしょう。
──最後にこれから本特集を読む読者へ、フレームワーク習熟のアプローチに使えるポイントを教えてください。
自分の購買行動をそのフレームワークで振り返ってみると、消費者としての自分の行動が客観的に見えることがあります。これは、フレームワークを用いる練習としておすすめです。たとえば、パーセプションフロー・モデルでいうと、行動/パーセプション/知覚刺激の部分は、自分の購買行動から埋められます。最初のうちは、行動とパーセプションあるいは知覚刺激とパーセプションを混同してしまうことが多いのですが、何ラウンドか繰り返すと、消費者としての自分の行動、人間がモノを買うとはどういうことかに気づけると思います。
また、ことパーセプションフロー・モデルについてお話しすると、「パーセプションフロー・モデルは難しい」とよく言われるのですが、パーセプションフロー・モデルが難しいのではなく、マーケティングの全体設計を描くこと自体が難しいのです。高いマーケティングROIを効率よく、再現性を持って出せるような腕利きのマーケターは、行き当たりばったりでプランニングするのではなく、全体設計を作っていることが多いです。いずれにしても、難しいことをやろうとしているのは間違いないので、そこは諦めずに頑張りましょう。
──次号の2022年7月号には、音部さんがパーセプションフロー・モデルを解説してくださったMarkeZineプレミアムセミナーのレポートを掲載します。パーセプションフロー・モデルの詳細については、ぜひ次号の記事を読んでいただければと思います。