発売と同時に話題沸騰。成功要因はティザー期の種まき
──TikTokを活用したのはプロモーションだけの目的でなく、商品を楽しむ場の提供=CXの観点もあったんですね。
若井:はい。リップモンスターは「ワクワクするデジタル体験」をキーワードに、商品開発からコミュニケーションの設計に至るまで、SNSに特化した作り方をしています。たとえば、色名を「欲望の塊」「Pinkbanana」「2:00PM」などつぶやきたくなるような独特なネーミングにしたり、思わずパケ買いして写真を撮りたくなるような商品パッケージにもこだわりました。そして、コミュニケーション設計では、TikTok、Twitter、Instagram、YouTube、LINEと主要なSNSやプラットフォームを網羅的に取り入れ、お客様がリップモンスターを楽しめる仕掛けを随所に散りばめました。

2006年にカネボウ化粧品に入社。営業を4年経験した後、本社の宣伝部門に配属。2018年よりKATEのPR担当として従事。
──一連のデジタル施策について、ご説明いただけますか?
若井:発売前のティザー期に、まずはKATEの公式YouTubeチャンネルとTwitterで商品情報を解禁したり、美容家のみなさんを招待した発表会を開催したりしました。口コミ施策も実はティザー期から仕込んでいます。発売前に使用した方による「本当に落ちないし、使いやすい」という投稿や、それを受けた「リップモンスターってなに?」といった一般のお客様の声がティザー期にすでに集まっていたことは、ひとつ成功のポイントだったと思います。
そうしてある程度話題になっている状態で、2021年5月1日に商品を発売。同時に、外に出られなくてもメイクを楽しめる場として、TikTokのエフェクトを活用したリップモンスターの体験動画もローンチしました。
──TikTokを展開した後の広がり方、熱の高まり方はすごかったですね。
若井:はい。TikTokのエフェクト動画では、4人のパワーインフルエンサーを起用させていただきました。この4人の投稿をミドル層のインフルエンサーが真似して上げてくださり、そこから一気に一般のユーザーの方々へ広まっていきましたね。TikTokを活用したのはこれが初めてではありませんでしたが、今回は「タイミング×コンテンツ」がしっかりはまったからこそ、ここまでの盛り上がりを作ることができたのだと思います。
──クリエイティブは、どのようなところにこだわったのでしょうか?
若井:TikTokは、情報を求めてなにかを探しに来ているユーザーよりも、「なにかおもしろいものないかな?」くらいのライトな感じで動画を見に来ているユーザーのほうが多いと考えています。ですので、まずはインフルエンサーの方の世界観を壊さないことを第一に、こうした動画を体験して下さる方の気持ちにとことんこだわって作りました。たとえば、「Pink banana」という色名に合わせたエフェクトでは、上からバナナが降ってくる仕様にすることで、広告感を出さずともエフェクトと商品をリンクして認識してもらえるように工夫しています。

また、起用するパワーインフルエンサーの方も厳選しました。普段リップを紹介していないインフルエンサーの方に商品を紹介してもらったら、いくら人気があったとしても、広告感が出てしまいます。ですので、リップメイクに興味がありそうな方たちがフォローしているパワーインフルエンサーへ依頼をしました。