人材不足と人材育成の両方に働きかける解決策
――マーケティングの業界でも人材不足が深刻な問題となっていますが、イーデザイン損保ではどうですか?
現在、CX推進部には兼務含め33名(2022年6月時点)が所属しているのですが、従来商品と新商品のプロモーション、広報、ウェブサイトとアプリの運用、アナリティクス、戦略設計などすべてをこの33名で行っています。一人ひとりがこなしている仕事と役割は膨大で、正直、人材不足の課題は顕在化しています。
――なるほど。そうした課題に対し、どのような対策をされていますか?
組織内はあえてフラットな体制にしており、テレビとデジタル、広報など領域や役割でチームを区切ることはしていません。人材がスピーディに育つスタートアップの良さを取り入れ、1人に複数の役割を持たせる、場合によっては予算管理まで任せて責任を持たせる形を取っています。もうひとつ、人材不足と人材育成の両方を解決する目的で、広告代理店と強力な協業体制を敷いています。新しく入ってきた社員のOJTも含め本当にワンチームで動いており、これはお互いの目線を上げ、ノウハウを共有することにも繋がっています。これまでパートナー企業との仕事のやり方はいろいろなパターンを経験してきました。すべてインハウスにするのも、もちろんすべて丸投げするのも良くない。お互い対等にコミットし合い、互いに成長していく、今のスタイルはとても良いと思っています。
――「人を育てる」ことに向き合う際、大事にされていることはありますか?
「強みを伸ばす」ことにこだわっていて、これは若手時代に自分が受けてきて嫌だったことの反面教師でもあります。私が若手だったころは、全員が平均的なジェネラリストとなることがよしとされている時代でした。なので、自分の弱点を補正するようなアドバイスや教育を受け、ひたすらそれを直してきたのですが、結果どうなったかと言うと角が取れて、“普通”になってしまうんですよね。角があるからこそ自分の個性が強みになるのに、角がなくなってしまったら、それは強みとしては発揮できなくなるわけです。丸くなってからそのことに気づいて、もう一度角を作ろうとするんですが、それは無理なんですよね。
そんな自分の経験もあり、私は部下の角を取るようなアドバイスは基本的にしていません。弱みを補正しようとも思わないですね。逆に、今ある角をより鋭くしていくようなアドバイスや機会はどんどん提示しています。
――最後に今後の展望をお聞かせください。
現在イーデザイン損保で行っている新たな取り組みは、東京海上グループ全体においても非常に大きな意味を持っています。我々がクイックに戦略を実行し、成功体験と失敗体験をグループ内で共有することで全体のDXを加速させていくところまでが、イーデザイン損保の役割であり、私自身のミッションです。また、冒頭でお話ししたとおり保険に対するお客様のイメージは、現状いいものではありません。「事故のない世界を共創する」というイーデザイン損保のミッションを事業として実現することで、保険業界を一歩進化させたい。そして、保険ないし東京海上グループに対するお客様のイメージを変えていきたいと思っています。
※1 保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語。