5Cモデル活用3つのカギ
最後に、電通の松野泰大氏が5Cモデルを活用して統合マーケティングを進めるうえでの実践の「カギ」について解説する。
この数年間でメディアにおける役割の境目がなくなってきている。たとえば、従来テレビCMはリーチ拡大、デジタルはアクションの促進であり、その両者をつなげればオンオフ統合だと考えられてきた。しかし、それだけでは解決できない課題も多数出てきている。今やテレビCMの直接的な行動喚起も可視化されるし、人によってはデジタルのほうが認知されやすい。
メディア・テクノロジーも多様化・複雑化し単純な話では許されない今、実践のカギとはどのようなものか? 松野氏はオンオフ統合マーケティング実践のカギを3つ挙げる。
1つ目は、マス脳・デジタル脳を融合させたチームだ。本来、統合マーケティングとは、オンにもオフにも区分けしない『人』起点の設計図からスタートすべきだ。考えるべきは、どんな人を狙うか(ターゲット)、その人は今どんな状態か(インサイト)、どのプロセスをどう変えるか(Before/After)であって、その手段としてのマスやデジタルは意識しなくていいともいえる。
しかし、携わるメンバーの出自によって、考え方に「マス寄り」や「デジタル寄り」といった偏りが出る。これがオンオフ統合マーケティングにおけるありがちな課題だと松野氏は指摘した。
「マス脳タイプの方は、戦略やコアメッセージの開発に秀でている一方、デジタルに関しては、施策の効果検証などにまで目が向かないかもしれません。デジタル脳のタイプの方は、PDCAや数値改善にコミットできる一方、先述の人を起点した全体の流れには目が向いていないかもしれません」(松野氏)
そこで松野氏は、統合マーケティングの推進をけん引する「統合スペシャリスト」を置くことが有効としたうえで、その統合スペシャリストは「マスデジ統合脳タイプ」の人材が担うことがふさわしいとした。こうした人材が、全体を俯瞰しながらも細部への視点も持ち、フルファネルかつオンオフ統合で有効な戦略の立案と、施策の設計をできることが重要だ。
とはいえ、こういったバランス感覚を持った人材は市場においてかなり希少でもある。電通✕セプテーニの協業においては、人材育成に注力するとともに、両社それぞれの人材が補完し合いながら統合を推進するツインフロント・ツインプランニング体制をとっているという。
5Cの条件を満たした事例とは?
2つ目のカギは、絵や理論だけで終わらせない実行ソリューションだ。マスとデジタル、それぞれの実践知とデータを掘り下げていくところまではできても、そこからマスとデジタルの連携したソリューションを実行するところまでやり切れない。「『なんとなくこれでオンオフ統合できてそう』という雰囲気で乗り切ってしまうケースが散見されます」と松野氏は指摘する。
最後の実行までやり切るためには、可能な限り豊富なデータとソリューション群をもって対応する必要がある。電通×セプテーニの場合は、フルファネルをカバーする多彩なソリューション群を活用し、最適解を追求しているという。
最後のカギは、5Cモデルを一歩踏み込んで活用することだ。先述の5Cモデルは「いわばオンオフ統合の実践知の集積。各社の商品や環境、ブランドステータスごとに一段掘り下げて解釈・適用することで、次に取り組むべき点が見えてくる」と松野氏。
たとえばトップファネルの「認知」でマスとデジタルを有効活用したいケースにおいて、5Cを一歩踏み込んで活用するには、下図のようなポイントが浮かび上がる。
5Cの条件を満たした好事例として、セッション内では2つの事例が紹介された。たとえば、コアに関しては、コネクテッドテレビをはじめ、ファネルを一気通貫した戦略を進めている。またコミュニケーションでは、認知を目的としたデジタル用の短尺素材やミドルファネル向けの素材など、適切なプランニングによってオンオフ統合が進められ、深化している。
以上、セッションではオンオフ統合を実現するためのフレームワーク「5Cモデル」と、実践のための3つのカギが紹介された。最後に甲斐氏は次のように語り、セッションを締めくくった。
「オンオフ統合マーケティングはいきなり完全にやろうとせず、3つのフェーズに分けてやっていきましょう。そこで『5Cモデル』をフレームワークとして活用してください。そして、知識とスキルを持った体制・豊富なデータとそれを活用する実行力・5Cモデルの活用という3つのカギも重要です。
電通とセプテーニは、オンオフ統合マーケティングというテーマに本気で向き合って、ワンチームとして総合力を高めるよう連携しています。この領域に興味のある方、取り組んでいきたい方は、ぜひお声掛けいただけると幸いです」(甲斐氏)
今回のセッションのアーカイブ動画を公開中!
現在セプテーニのWebサイト内で、今回のセッションのアーカイブ動画を公開しています。より詳細な内容を知りたいという方は、ぜひアーカイブ動画をご覧ください。
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