普段タクシーに乗らない人も呼びこめる方法とは?
──現在「GROWTH」以外にも車窓に広告を掲載できる「Canvas」も提供していると思います。今回リニューアルした「GROWTH」と組み合わせることでどのような体験が提供できるようになるのでしょうか。
Canvasは元々屋外広告をイメージして作ったのですが、タクシーアプリ「S.RIDE」と連携してCanvasタクシーの指定配車を可能にしたことで、ユーザーに対してブランドの体験を迎えに行かせることが可能になりました。好きなコンテンツやブランドとコラボしたタクシーが自分のところに来て、乗車すると「GROWTH」で関連したコンテンツを視聴できる。移動空間すべてをブランド体験として届けることが可能になります。
──Canvasは2021年5月より提供を開始していますが、すでに活用事例も出てきているのでしょうか。
はい、特にアニメやマンガなどのIP(知的財産権)やアイドル、スポーツなどファンが多く集まるビジネスと相性が良く、いくつもの事例が生まれています。
たとえば、トータルビューティーケアブランド「LUX(ラックス)」とアジア発9人組ガールズグループ「TWICE」とのコラボレーションプロジェクト「LUX TWICE TAXI」でもCanvasとGROWTHが採用され、車窓に各メンバーのクリエイティブを投影し、車内ではLUX×TWICEの特別映像を放映しました。また、Canvas・GROWTHに加えて用意したのが、数台限定でメンバーのラッピング車両や内装も施した車両です。この車両はタクシーアプリ「S.RIDE」で指定配車することもでき、一部車両では乗車カードも配布しました。
これらの施策の結果、ファンの方がSNSで乗車した感想を投稿し、関連投稿のインプレッションの合計は約100万となりました。S.RIDEの配車数に関しては、通常期間と比較し、約1.7倍を記録しました。走行期間中の配車ユーザー属性の傾向として、女性の比率が半分以上であったことがわかりました。その他にも走行開始日には、200件を超える配車リクエストも確認できました。
4週間の最終週まで需要が継続した結果、合計3,000人を超えるファンの方に乗車体験をしていただくことができ、著名人やインフルエンサーが偶然「LUX TWICE TAXI」に乗車し、Twitterで話題になるなど、SNSでの話題化にも成功しました。
また、プロ野球チームの読売ジャイアンツとコラボレーションした「ジャイアンツタクシー」も好評でした。この施策では、コラボタクシーによる東京ドームまでの送迎と東京ドーム巨人戦チケット、選手のメッセージが聞けるオリジナル映像コンテンツの車内放映、グッズのプレゼントなどの特典を付けた観戦パックを販売しました。これにより、移動以上の価値を付けることに成功しました。
実際の反響に関しては、走行初日は満枠の予約をいただき、手応えを感じました。都内・都内近郊在住の方だけではなく、沖縄など遠方の方からの予約もありました。予約者に関しては、高齢の方を含めた家族連れが多く、コロナ禍で密を避ける移動手段としてもご利用いただけたのではないかと思います。
どちらの事例にも共通しているのが、普段タクシーを利用しない方に対してもタクシーを利用するきっかけが作れている点です。「ジャイアンツタクシー」のように東京ドームという目的地が存在しているケースなど、特定の場所に来てほしい目的がある企業のプロモーションでは有効だと考えます。
移動時間の可能性を広げていく
──最後に今後の展望を教えてください。
「GROWTH」のリニューアルに関しては、新型サイネージの設置作業を順次開始し、2022年10月以降都内のタクシーを中心に切り替えていきます。また、「Canvas」は2023年以降に3,000台の実装を目指しているので、今後都内で「Canvas」が搭載されたタクシーが当たり前に見られる景色を作りたいです。
また、自動運転を見据えたビジョンも常に考えています。公道を自動運転タクシーが走るのにはまだ時間がかかりそうですが、自動運転が普及すれば移動のコストは下がりタクシーの利用時間は増えていくはずです。そこに向けて、新しい移動体験に向けた実証実験を行っていきたいです。
──実証実験とは、具体的にはどのようなものをイメージしているのでしょうか。
今PCやスマホで行っていることはすべて対象になると思います。ドラマを見たり、英会話レッスンをしたり、好きな音楽を聴いたり、様々な体験をタクシー移動の中で快適に行ってもらう方法を模索したいです。よく移動する○○という言葉がありますが、移動時間を別の体験に置き換えるのには、大きな可能性が眠っています。
リニューアルしてサイズアップした「GROWTH」のタブレットであれば、提供できるコンテンツや体験も広がるので、今後も「移動時間に、新体験を。」のコンセプトに即した移動体験を提供していきたいです。