SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングモデルの基本解説

【第3回】消費者起点のマーケティング戦略――11のパーセプションから感情的な繋がりを創る

「消費価値の差異」によって「広告評価」はどれくらい変わるか?

 検証は大きく2つのステップで構成しています。最初のステップは、普段の生活で商品やサービスを選ぶときに、11の視点をどのくらい認識(=意識)するのか、アンケート調査を行い、消費者一人ひとりで異なる価値の受け取り方の度合いを測ります。言い換えれば、消費者一人ひとりの11の消費価値観を明らかにするステップです。次に、それぞれのパーセプションを誘発させる広告クリエイティブを提示し、その評価を確認しています。

 今回は、「シンガポール旅行ツアー」をテーマに実施した調査結果の一部を取り上げます。内容はシンガポール旅行ツアーを「経済的価値」「快楽的価値」「優越的価値」の3つの消費価値を起点に、それぞれの切り口から3種類の広告表現を試みています(図表2)。

【図表2】3つの消費価値を起点にした「シンガポール旅行ツアー」の広告表現 消費価値と広告評価に関する調査より
【図表2】3つの消費価値を起点にした「シンガポール旅行ツアー」の広告表現
消費価値と広告評価に関する調査より(調査概要は記事末尾に記載)

 そして、それぞれの訴求軸に対応する消費価値観が、高いグループと低いグループで広告表現に対する反応の違いを確認しました。

消費価値に合わせた広告表現は有用性がある

 調査結果を分析すると、各訴求軸に対応する消費価値観が高いグループは、低いグループと比較して、「この広告は魅力的である」「この広告は自分向けに感じる」「この商品を知りたくなった」と回答する割合が高いことがわかります(図表3)。

【図表3】「シンガポール旅行ツアー」広告評価の結果 消費価値と広告評価に関する調査より
【図表3】「シンガポール旅行ツアー」広告評価の結果
消費価値と広告評価に関する調査より(調査概要は記事末尾に記載)

 これは、消費者が認識する価値に合わせた広告表現により、商品やサービスの受容性が高まることを示唆しています。今回は割愛しますが、他のテーマ(消費財、耐久財)でも同様の検証を行っています。その結果においても、広告表現に対応する消費価値観の高いグループは、低いグループと比較すると、1.5~3倍高く、ポジティブな回答する傾向が表れています。つまり、消費者が認識する価値を起点に商品やサービスを訴求することで、興味関心を高めることができます

 今回の分析では、それぞれの広告表現に対して、対応する消費価値観が高いグループと低いグループに分けて、断片的に分析しています。消費者の中には、「経済的価値」「快楽的価値」「優越的価値」の3つの側面すべてに価値を認識する人もいれば、この中の一つだけ、あるいはどれにも価値を感じない人もいます。誰もが11の価値基準=バロメーターを持っていますが、文脈によってその程度に違いがあるということです。消費者一人ひとりで価値の受け取り方が異なるからこそ、商品やサービスのパーセプションを多様化することで、より多くの人に受け入れてもらいやすくなります

パーセプションの多様化は「一貫性のあるブランド」から

 しかし、パーセプションの多様化を急ぎ、強引に広告メッセージを増やすのは得策ではありません。複数の広告メッセージが相反するイメージを持つ場合、消費者の混乱を招き、離反に繋がる恐れがあります。また、商品やサービスの特性によっては、11の消費価値すべての側面から価値訴求することが困難な場合もあるでしょう。では、どのように消費者が受け取る価値を多様化すればよいのでしょうか。ブランド論の視点に立ち、パーセプションを多様化する際のマーケティングの在り方を考えてみたいと思います。

 ブランド論の大家、D.A.アーカーによれば、強いブランドの大半はそのブランド・メッセージに「一貫性」があります。ポジショニングは、市場に定着するまでに時間が掛かるため、長い時間軸で一貫性のあるイメージで浸透したブランドは、強いブランドを構築できる可能性があると主張しています。このような視点を鑑みると、まずは特定の価値に特化して、独自のブランドポジションを確立することが必要と言えます。

次のページ
パーセプションの多様化で、消費者との繋がりを最大化

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • note
関連リンク
マーケティングモデルの基本解説連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

安野 将央(ヤスノ マサヒロ)

株式会社マクロミル

シニアマネージャー/マーケティングサイエンティスト

 

大学卒業後、D2C企業にてデータベースマーケティングに従事。新規顧客の獲得からリピート顧客育成まで、LTV(顧客生涯価値)をベースとした顧客分析でPDCAマネジメントを担当。マクロミル入社後は、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/09/28 07:00 https://markezine.jp/article/detail/40112

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング