継続的な制作の鍵はストーリーテリングにあり
継続的なコンテンツの更新を目指すにあたり、課題となるのが「ネタ」探しだ。制作継続の秘訣として、橋本さんは「新商品の継続的な開発」を挙げた。「新しい商品ができれば、それだけ紹介するネタも出てきます。伝えたいことが自然と増えていくため、話題には困りません」と話す。新商品を単に紹介するのではなく、その裏にあるストーリーを語っていく──ストーリーテリングがコンテンツの継続性にも結び付く好例といえるだろう。
イチバのハコのサイトコンテンツには市場のそのままの姿が現れている一方、InstagramやFacebookには見栄えを意識した写真が並ぶ。橋本さんは「サイトでは市場のリアルな姿を伝えつつ、SNSはカタログのようなイメージで運用している」と、メディアごとの狙いを説明する。写真が中心となるInstagram、Facebookに合わせたコンテンツを発信することで、コンテンツに幅が生まれているのだ。

サイトのコンテンツを充実させつつ、新規顧客の獲得にはSNS広告も活用している。「新規のお客様の獲得は大切」とする一方、同社は「既存顧客を大切にする」という基本姿勢を貫いているという。橋本さんはその思いについて「売上の調子が悪い時期に『何が大切なのか』を社員で話し合いました。その結果『やはり既存のお客様だ』という結論に至ったんです」と話す。
先行販売で寒ぶりが即完売
既存顧客向けのコンテンツとして活躍しているのが、月に2度配信するメールマガジンだ。「メールマガジンの会員には特別感を持っていただきたい」と橋本さんが話すように、会員限定の情報を発信している。その1つが、ECサイトでは販売されない特別商品の案内だ。
サイトでは基本的に近江町市場で販売している商品のみを取り扱っているが、橋本さんが取材の過程で見つけた「近江町市場外のおすすめ食材」などをクローズドな情報として発信し、販売している。橋本さんは「イチバのハコで近江町市場以外の商品を取り扱うと、サイトにぶれが出てしまいます。とはいえ、おいしい食材は石川県内にたくさんある。せっかく取材させていただいたのであれば、収益に結び付けた方が互いにウィンウィンになれますよね」と説明する。
クローズドコンテンツで大きな反響を得たのが「ぶりしゃぶ鍋のハコ」の企画だ。同企画では10キロ超の天然寒ぶりを買い付け、加工する過程をメールマガジンやSNSで日を追って発信していった。メールマガジン会員向けに先行販売したところ、即完売したという。「予想を超えた反応でした」と橋本さんは振り返る。「楽しみにしていたのに買えなかった」という声が相次いだため、急遽ぶりをもう一匹購入し、非会員の顧客にも販売することになったそうだ。この“特別感”がリピーターを生む要因となっているのだろう。
