生活者に気付きやアイデアを与える表現が鍵
続いて大林氏は、同調査の結果から浮かび上がった「ダイバーシティに関する発信・広告表現のポイント」を二つ紹介する。一つ目のポイントは「多様な個性の尊重」「固定概念や常識に縛られない柔軟さ」といった、ダイバーシティの前提となる基本的な考え方だ。

二つ目のポイントは、生活者に気付きやアイデアを与える表現だ。「あまり知られていない問題に目を向けさせる表現や、ダイバーシティについて考えるきっかけを与える表現、理想の社会やライフスタイルを提示する表現などが望ましい」と大林氏。
また、大林氏は前述の二つの発信・広告表現のポイントに加え、積極的に発信すべき企業の取り組みも紹介する。取り組みの例は以下の通りだ。
1.多様性のある社員へのサポート
2.男性育休の推進
3.女性の管理職登用
4.ジェンダーフリーな製品の開発
炎上を過度に心配しなくても良い
大林氏は、丸の内ブランドフォーラムの代表であり、経営学者でもある片平秀貴氏の考えを引用しながら「ブランドと消費者の関係は『上から目線』から『同じ目線』へ、『働きかける』から『寄り添う』へと変わってきている」と話す。

「『同じ目線』『語り合う』『双方向性』などの要素は、TwitterをはじめとするSNSの特徴とも非常にマッチしています。それゆえ、企業やブランドがダイバーシティを発信する上で、SNSはより一層重要なプラットフォームになってくるでしょう」(大林氏)
ダイバーシティは非常にセンシティブなテーマでもある。企業・ブランドが発信するにあたり、炎上のリスクはあるのだろうか。Twitter Japanとインテージの調査では「過去半年から1年程度の間に、SNS上の広告や企業・ブランドからの発信で、いわゆる“炎上”したものを見たことがあるか」という質問に対し「確かに見た」と答えた人は1割程度に留まっていたという。

また「炎上を見た」と回答した人にその内容を聞いてみたところ「文化、人種、宗教に対する配慮が足りない」「女性を性的な目線で見ているような表現」などが挙げられたそうだ。
「倫理的に受け入れ難い表現は当然望ましくありませんが、企業・ブランドが社会課題に対する前向きな投げかけをする分には、炎上を過度に心配しなくても良いのではないでしょうか」(大林氏)
「ブランドイメージを毀損させたくないから、ダイバーシティに関する発信もしない」と考えている企業の担当者は、本セッションで紹介された発信のポイントを踏まえて、ローリスクハイリターンな発信に挑戦してみてはいかがだろうか。