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特集:2023年・広告の出し先

広告面としてどこまで使えるか? 2022年、日本のリテールメディアの現在地

広告の出し先としてリテールメディアを使うときのポイント

──今回は、特集テーマを「2023年・広告の出し先」としています。まだまだ試験的な部分もあるとは言え、すでに多くの広告主がリテールメディアの活用を視野に入れて動いていることがわかりました。ここからはリテールメディアを使う広告主側の視点で、活用のポイントを教えていただけますか?

 リテールメディアの最大の強みは、やはりID-POSデータを活用しターゲティングと効果分析ができるところにあります。購買データをもとに広告を配信できるソリューションはいくつかありますが、データの活用範囲や多くのデータを正確に活用しながら施策と分析ができるのは、現状リテールメディア以外には存在しないと思います。また、広告を配信した結果、「来店したか/購入したか/継続購入されたか」まで測定することも、これまでのデジタル広告では実質不可能でした。なんとなくの購買リフト値で見たり、拡大推計したり、間接的に測定や分析をする方法はあっても、広告効果測定およびデータ活用にはどうしてもカバーできないリアルとデジタルのデータの断絶があったわけです。実際に広告主がリテールメディアを評価しているのも、この課題感を解決できるというポイントが大きいと思います。

 もう1つ、広告主がリテールメディアに注目するようになった背景には、Cookieレスの影響もあります。Cookieレス時代を見据えた施策の1つとしてリテールメディアの活用に力を入れていきたい、といった話も広告主からお聞きしています。ただ、外資系メーカーと国内メーカーでリテールメディアの捉え方の違いが大きく、広告メディアとして捉えるか、販促として捉えるかの違いも明確に出てきている印象です。

──リテールメディアは、マーケティングファネルの中で考えると、最後の購買を一押しする位置づけになるのでしょうか?

 現状はそうなります。というのもデジタルの繋がりが弱いことから、現時点では店舗の顧客接点を活用する広告メニューが多く、結果的に購買/リピートに貢献する位置づけになっている、というのが正しい見方だと思います。とはいえ既にテレビ広告との連携は国内でも始まっていますし、会員データをもとにした拡張配信が今後始まれば、認知獲得/比較検討の施策にも繋がっていくはずです。アプリやECでの広告メニュー化が進めば、将来的にはファネルを横断して消費者を捉えることができる唯一の広告面になっていくでしょうし、これに関しては日本でもそう遠くない未来だと思っています。

 購買への寄与については、たとえば「これまで定期的にその商品を買っていたのに、何かのきっかけで買わなくなってしまった人」に対する広告配信は、特に高い効果が出ています。中には、ROASが600〜700%になるケースもあるほどです。一方、先述したとおり、競合商品からのブランドスイッチや新しいカテゴリの開拓など認知獲得や比較検討のファネルにおける施策はROASが低くなることももちろんあります。

 ですので、リテールメディアを2023年に活用するポイントを挙げるならROASの良し悪しだけで施策を判断しないことが重要です。「その人がなぜ自社の商品を買わなくなったのか?」をこれらの施策や購買データをもとに分析しようとする企業と、広告効果だけを見て施策をやめる企業とでは、リテールメディアの活用により受ける価値が変わってくるはずです。

──リテールメディアが独自で持つデータの価値を、広告主が活かせるか活かせないかが問われるということですね。

 そうですね。既に活用しているLINE、Google、Yahoo!、Twitterといった媒体においても、リテールメディアから広告配信することで、リアル店舗での購買に寄与したかなど、リテールメディアが有するデータを用いた分析が可能になります。たとえば、ある企業は、1つのキャンペーンで16のクリエイティブを制作して、リテールメディアで配信。そのうち効果の高かったクリエイティブを横展開して他のデジタル施策に繋げたり、テレビCMのクリエイティブに活かしたりしていました。リテールメディアで効果の良かったクリエイティブは、「一番購買に結び付きやすいクリエイティブ」と見ることもできます。クリック率などだけで広告の良し悪しを判断するのではなく、データの見方を広げてみると良いと思います。

リテールメディアは、リテールDXの資金源に

──これからリテールメディアの開発・運用、広告主による活用をどのように活発化させていきたいですか?

 弊社でサポートしているリテールメディアも50社を超えてきたので、これからはオンライン上のタッチポイントの強化に注力し、それぞれのタッチポイントでの広告メニュー開発を急ピッチで進めていきます。ただ、リテールメディアは、小売企業の新たな収益の柱として取り組むだけではダメで、やはりまずはユーザーにメリットや価値を提供することが重要です。実は、ちょうど昨日ニューヨーク視察から帰ってきたばかりなのですが、この部分でも米国のリテールメディアがしっかり機能していることを至る所で感じました。リテールメディアの構想が最終的にユーザーの買い物体験の向上に繋がっているかどうかは、しっかり検証し続けていかなければいけないと思っています。

 そして、リテールメディア事業も小売企業の経営課題やDX推進の1つにしかすぎません。店舗のオペレーションや廃棄ロス削減、商品の受注管理の自動化、シフト最適化など、店舗のオペレーション側にデータ活用のメリットを広げていくことも我々にとって非常に重要なテーマです。

 当たり前ですが、DXを推進するには資金が必要です。私は、小売企業にとってリテールメディアはこの資金源になるものだと思っています。ウォルマートは昨年投資家向けのカンファレンスで「今後のウォルマートの収益の柱はヘルスケア、金融、広告の3つ」と話していましたが、このうち最初に取り組んだのが広告事業です。広告事業の利益で広告メニューや広告の面をさらに増やし、その利益をもとにヘルスケアや金融の領域へ進出している。もっと言えば、新たに開拓したヘルスケアや金融の領域で創出した顧客とのタッチポイントやデータをまた広告に活用する、といった循環を生み出そうとしています。

 日本の小売企業においても、リテールDXのためにいきなり何十億も投資をするというような決断はなかなか難しいと思うので、リテールメディアがその活力になるように、全方位でチャレンジしていきたいと思います。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2022/10/27 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40347

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