アライアンスの組み方、活かし方
富田(SAP):オートバックスセブンさんもトラスコ中山さんも、産官学連携でアライアンスを組んでいらっしゃいますよね。どのようなアイデアから出発してアライアンスを決め、提携先を探されているのでしょうか。
則末(オートバックスセブン):「自社だけで実現できることはない」という前提に立っています。自動車整備技術が高度化していく中、我々だけでできること/できないことが自ずと見えてくるんです。「それならできるところと連携しよう」「我々が設備投資して、ほかと連携しながらビジネスを広げていこう」と。お客様が免許を取得して車を購入されてから、乗らなくなって免許を返納されるまでつながり続けたい。そのためにはどういう企業と連携する必要があるのか?という視点で考えています。
数見(トラスコ中山):スティーブ・ジョブズの言葉を借りて説明すると「Connecting the dots」ですね。当社はスタートアップ企業や名古屋大学と産学連携していますが、戦略的にアライアンスに持っていったというわけではありません。ネットワーキングやSAPのユーザー会など、外に出て様々な人と交流すると、良いつながりが生まれる気はします。良いつながりができると、良い人とまた出会えるもの。出会いの連鎖の中でアイデアをもらっています。人と出会うことでスパイラルができて、ある時それがパッと何かに昇華する。そんな感覚です。
ステークホルダーとの間に、コンフリクトが生じたときは?
富田(SAP):CXのプロジェクトには、営業やマーケティングなど様々なステークホルダーが関係しますよね。新しいことに挑戦する際、全員から「いいね」をもらうことは稀だと思います。お二方はコンフリクトが起きた時、関係者の理解をどのように得て、投資を決定されているのでしょうか。
数見(トラスコ中山):自分起点で様々なアイデアを出したり、やりたいことを実現したりできれば良いですが、実際は会社のトップから出たアイデアを現場の担当者が具現化していくことが多いのではないでしょうか。ここで大事なことは、単に言われた通りの対応で終わらせないこと。自分ごと化できなければモチベーションは上がりません。トップダウンであっても、自分のやりたい要素を少し詰めることで、モチベーションアップにもつながります。
富田(SAP):仕事を自分ごと化するにあたり、オリジナリティを出したり自分の意見を発したりすることはなかなかハードルが高いのではないでしょうか。
数見(トラスコ中山):当社は比較的寛容性があると思います。自分が「良い」と思うことは、上にお伺いを立てなくても実行してOK。仮に突っ込みを入れられても、あとはやるだけです。
則末(オートバックスセブン):当社では、まず社長と私が共感するところから始まります。アイデアは社長のトップダウンで生まれる場合もありますし、私からのボトムアップで生まれる場合もありますが、2人が「こういう世界を築けたら良いよね」と共感する必要があるのです。
大変なのは、理想とする世界をつくろうと実際に動き出した後です。漠然とした世界観では誰も理解してくれませんし、現場の担当者は自分の事業の売上や利益に集中しています。「その世界は自分の事業にどう貢献するの?」と思われるでしょう。相手の目線に立って「こういう世界が生まれると、あなたの事業にこんな良いことが起こります。やらないともったいないですよね」と、挑戦の意味に気づいてもらえるよう、靴底を減らしながら伝えていくしかないと思います。