スペシャリスト・マネジメント、それぞれの特性を引き出していく
──ML制度を導入するにあたり、難しかった点はありますか。
石井:マーケティングリード(以下、ML)は現在、32名います。ゆくゆくは、全領域に全施策分のMLを配置することを考えていますが、まだ人数が十分ではないのが現状です。自組織にMLがいなくて困ることがないように、他組織のMLに相談できる環境を用意する対応は進めています。
スペシャリストというと、マネジメントを重要視しないイメージがあると思いますが、ML制度ではMLがスペシャリストたちをマネジメントする役割を持ちます。今後はMLの業務領域を定めたガイドラインを作る予定です。ここまで期待されてるんだ、踏み込んでいいんだ、という目安をつくることでMLの不要な躊躇をなくし、スペシャリストたちがもっと成長しやすくなるようにしていきたいと思っています。
──ご自身のマネジメントの仕方も変わりましたか。
石井:MLへの権限委譲は進んでいますね。私は元々各施策を見ていくのが好きでしたが、今は会議をしていても組織が自走して施策を精度高く立案・実行しているので、アドバイスが不要となっている場面が多いです。
またメンバーからキャリアの相談があった際、マネージャーとMLという2つの選択肢を提示できるようになったのも大きいです。2つの道について真剣に悩んでいるメンバーの姿を見て、ML自体が魅力的な選択肢になっているのだと実感しています。
──ほかにも変化を感じる場面はありますか。
石井:MLとマネージャーのすみ分けがメンバー間でも浸透し、それぞれの良さをしっかり把握していることを感じますね。メンバーが「この話だったらマネージャーではなくてMLの守備範囲だよね」と自分で判断して、MLに相談しに行くケースもよく見かけるようになりました。
また先日、MLが集まるオンラインミーティングに、MLではないメンバーが参加していました。なぜ参加しているのか聞いたところ、MLがどういう仕事をしているか、詳しく知りたかったからのようでした。

「個人」と「組織」、両面で最良を目指していくには
──一方で、「個人の意向」と「組織の価値の最大化」が必ずしも両立しないことも多いかと思います。どのようにバランスを取っているのですか。
石井:両方のバランスを取るのはかなり難しいです。なので、個人と組織におけるベクトルのギャップがどうしたら最も小さくなるかを常に模索しています。
その前段階として重要なのが、“メンバーが本当にやりたいこと”をつかむことです。これができないと、個人と組織におけるベクトルのギャップを小さくできませんからね。表面的な“Will”の言葉だけでなく、「なぜやりたいのか」「何を成し遂げたいのか」など深く会話し、本質を掘っていく。それによってメンバーにとって適切なマネジメントをするようにしています。
──メンバーが本当にやりたいことを聞くために気をつけていることは何でしょうか。
石井:本質を理解していないマネジメントは、時に誤った道を指し示すことになってしまうので、日ごろからコミュニケーションは私の方からとるように意識しています。
もしコミュニケーションを取りにくいメンバーがいたら、「話しやすい上司にぜひ話してほしい」とお願いしています。メンバー自身がやりたいことをきちんと表に出すのも、メンバー側の責務だと思うからです。そして発信先は直接の上司ではなくてもいいように、組織長同士で団結・連携して対応しています。