SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』

「テレビのD2C化」は第二章へDisney+/Netflix参入で広がる、CTV広告の出し先

 米国やグローバルにおける広告・マーケティング業界の最新情報をまとめたベストインクラスプロデューサーズ発行の『BICP MAD MAN Report』。そのカットアップ版をお届けする本連載。今回は、CTV広告市場参入で業界をざわつかせているDisney+とNetflixにフォーカス。2社のビジネスモデルの違いを紐解いていく。

※本記事は、2022年10月25日刊行の定期誌『MarkeZine』82号に掲載したものです。

Netflixが12年かけた基盤を、Disneyはわずか2年で構築

 世界でストリーミング・サブスク競争への注目が高まっている中、2022年8月11日に掲載されたロイターの記事は、「ディズニー4~6月期、動画配信加入者2.21億人 ネットフリックス抜く」の見出しが新鮮だった。このトップラインの数値は、「Disneyの腕力」を発揮させた赤字覚悟の「販促キャンペーン祭り」の結果だ。Disney傘下の「Hulu」と「ESPN+」の数字を(重複を含めて)足し合わせて、Netflixよりもわずかに上回った……という意地である。

 サブスク先発のNetflixは「有料=優良なコンテンツ=広告なし」というビジネスモデルを起点に2010年頃からアカウント数を積み上げてきた。「まあまあお手頃な」月額料金設定で、12年かけてアカウント数を2.2億件(世界)にまで伸ばしている。この「お手頃料金」が成立するのは、Netflixが有料コンテンツの制作費を「営業キャッシュフロー赤字」で負担しているからだ。人気なコンテンツ制作の費用計上をB/S資産として、未来に消去する=ツケにするというカラクリで成り立っている。

 こうした手法でNetflixが12年かけて構築したビジネスの土俵を、Disneyはほんの2年で揃えたことになる。たとえば、日本市場の価格を見ても、Disneyは月額1,980円(プレミアムプラン)のNetflixに劣らぬプレミアムな視聴コンテンツを揃えて、月額990円でぶつけてきた感がある。

 「D2C部門」と称するDisneyの「テレビ事業のサブスク」セグメントの営業収支は、今年の9ヵ月(第3四半期)で累計の赤字幅が約3,300億円(25.4億ドル)に増大。昨年同時期の約1,360億円(10.5億ドル)の赤字幅の「倍以上」に広がっている(Disney第3四半期発表資料P49)。

 それもそのはず。Disney+の「赤字覚悟の販促」は、アジア(特にインド)では驚きの「月額160円(広告収入を含むユーザー1人当たりの平均収益)」というバラマキ具合い。日本とインドの1人あたりのGDPを比べるまでもなく、この価格は激安だ。そんな激安プロモーションによって、サブスクアカウント数をアジアで約6,000万件積み上げての、世界合計2.2億件(Netflix超え)達成という力技だった。

ストリーミング・サブスクのビジネスモデル、第二章へ

 日本市場だけ見ていると気づきにくいのが、Disneyの「広告グローバル・プラットフォーム化」だ。インド・アジア市場では、「無料」メニューを土台(裾野)に、「Disney+Hotstar(*1)チャンネル」内で広告付きで見られるメニューをスタートさせている。特に、モバイルのみで視聴するプランは、広告付きでありながら「月額83円」という低額課金ですべてのコンテンツが制限なく見られる。薄利サブスクの収益の上に数千万単位の広告露出課金をのせて稼ぐモデルだ。

 同様の手法を取るのは、オンライン映像×広告事業モデルで王者のYouTube。インド市場には約4.7億人のアクティブユーザーが存在し、その上で「YouTube Music/YouTube Premium」の有料サブスク(月額約185円)を2019年に開始している。インドの場合に限れば、Disneyが目指しているのはこの無料YouTube4.7億人市場であり、このうち何割かが「Disney+Hotstarのサブスク月額83円」に寄り添ってくれれば、という算段が見える。

 Disneyに並行してNetflixの広告課金モデルも、(なんと)Microsoftとの座組が発表された(2023年開始予定)。Disney+がアジアで拡散中の広告モデル(とAmazonPrime)に対し、NetflixとMicrosoftの巨大資本がさらに集まるのだ。「CTV広告」が花盛りとなる第二章が始まっている象徴と言える。

この記事はプレミアム記事(有料)です。ご利用にはMarkeZineプレミアムのご契約が必要です。

有料記事が読み放題!MarkeZineプレミアム

プレミアムサービス詳細はこちら

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラスをご契約の方は
・こちらから電子版(誌面)を閲覧できます。
・チームメンバーをユーザーとして登録することができます。
 ユーザー登録は管理者アカウントで手続きしてください。
 手続き方法の詳細はこちら

次のページ
「Disney+」と「Netflix」の広告ビジネスモデルの違い

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2022/11/11 09:30 https://markezine.jp/article/detail/40381

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング