「友松重之」という顧客像を分析
第三者機関データの分析における留意点も友松氏は解説した。第三者機関データとは、国税庁などの公的機関や複数の有名な調査機関が発行している調査結果、テレビの視聴率データなどを指す。これらのデータも統計的に正しいからといって「チェックを怠ってはいけない」と友松氏は述べる。

「『権威ある機関の公開データだから』と確認を怠るのではなく、仮にそのデータを基にビジネスプランを策定するのであれば、調査の条件や使われている言葉の定義などをしっかり確認、理解しないと本質を見誤ってしまいます」(友松氏)
第三者がまとめたデータをどのように分析すれば、正しい顧客像を描けるのか。そのイメージを聴講者にもってもらうため「『友松重之』をクレジットカードのスペンディング(Spending=利用状況)で分析してみよう」と友松氏。友松氏は3社が発行するクレジットカードを併用している。1枚目がアメリカン・エキスプレスのカード。旅行に掛かる経費全般やテレビ・自動車などの耐久消費財の購入などに使用し、クレジットカードを使った出費において約7割近くをこちらのカードを利用して、対応しているという。
2枚目は、特定の会員サービスを利用する目的で使っている他社のプレミアムカード、3枚目は主に家族のスマートフォンの利用料金の支払いに利用しているというカードだ。クレジットカードを複数枚利用し、かつ利用するカードが用途に応じて分散している場合、注意が必要だという。
「代表性」の高いカードを見極めることが鍵
複数のクレジットカードを併用する顧客を分析する際にポイントになるのが、どのカードがその顧客のライススタイルに関し“代表性”があるかを見極めることだ。
「私の3枚目のカードのスペンディングは月々1,000~2,000円程度。分析者がもしこのカードだけを分析した場合、私を『独身者』と見誤るかもしれません。また2枚目のカードの利用額だけを見ても『平均年収よりは高いが月の消費額は数万円程度』とみなされる可能性があります。一方、メインで利用しているアメリカン・エキスプレスのカードを見ると、日常使いをしているため『子どもがいる』『可処分所得は●円くらい』『こんなライフスタイルを持っている』と実態に近い顧客像が見えてくるかもしれません」(友松氏)
つまり、この場合における代表性があるカードは、本人がメインカードとして利用するアメリカン・エキスプレスのカードであり「友松重之」を分析するにしても、どのカードのデータを分析対象にするかで結果は大きく変わる。「データソースやカテゴリーに代表性があるのか、偏りがないかは常に確認し続けないと、乖離が生じる。その点をきちんと見定める必要がある」と友松氏は強調した。
ここまで見てきたように、CMOはデータに対し真摯である必要がある。そのため、CMOがデータを活用して自社の経営状況を社外に説明する場面があったとしよう。その際に、たとえば「業績が右肩上がりであることを示すために、比較対象を売上が著しく低迷したコロナ禍に設定する」といったデータの“お化粧”をしないよう釘を刺した。
