シャンプーの量り売りで、顧客との対話の機会を創出
特別賞を受賞したのは、京都市で美容サロンを営むひさだアートインダストリーだ。同社ではシャンプーを自社で開発・販売。2021年12月16日には、そのシャンプー類を顧客の必要量に合わせて量り売りするサービスを開始した。コロナ禍で進んだマイクロツーリズムなどを背景に、ヘアケア需要も多様化したことから量り売りを始めたという。
審査員を務める東洋経済オンライン編集長の吉川明日香氏は、本施策を評価した理由に「量り売りの意義の見出し方」を挙げる。プレスリリースには、量り売りを開始した理由について以下のような記載がある。
量り売りは、必ず売り手と買い手にコミュニケーションを生み出します。たとえば、肉屋や八百屋の店主は、量り売りをしながら、旬の食材の調理法を教え、お客様の食生活をより豊かにします。シャンプーの量り売りも同様、季節特有の髪のコンディションやお客様の個人的な髪の悩み、状況に合わせた洗髪法や分量をお教えすることで、より多様な形で進む京都のお客様のヘアケア需要にお応えできると考えます。
「量り売りといえば『包装材が省けてエコ』『楽しい』といったイメージが浮かびますが、ひさだアートインダストリーが考える意義は、お客様とのコミュニケーションという意外なものでした。『SDGs』などマクロの潮流に乗っかるのではなく、コロナ禍で消費行動が変わっていく中で地域のお店として何ができるのか。役割を見直し、かつそれを丁寧に言語化・発信する姿勢は目を引くものでした」(吉川氏)
「PRの民主化」を目指すエバンジェリスト9名を選出
授賞式には、ひさだアートインダストリー代表の久田智弘氏らが登壇。同社がなぜシャンプー開発を始めたのか、その経緯を語った。
左が東洋経済オンライン編集長の吉川明日香氏
「当社は2022年で123周年を迎えました。私は跡取りとして元々はお客様の髪を切っていたのですが、最近では髪を切らず、お客様のお悩みの相談役に徹しています。その理由は、お客様から『使っているシャンプーが合わない』などのご相談を受けることが多いからです。そして『お客様の髪の問題に対し、よりコミットすべきだ』との考えに至り、シャンプー開発に着手しました」(久田氏)
久田氏は「シャンプーの開発者である私が、自らお客様の声を聞く機会を得られているのは非常に有益」と量り売りによる成果を語った。
授賞式終了後には、PR TIMESによって「プレスリリースエバンジェリスト」が発表された。プレスリリースエバンジェリストとは、プレスリリースによる情報発信の重要性を啓蒙する人物のことだ。地域や経験の有無を超えて、誰もが価値ある行動を伝えられる「PRの民主化」を実現することに本プロジェクトの目的があるという。初代エバンジェリストにはユーグレナの広報宣伝部長を務める北見裕介氏をはじめとする9名が選出された。北見氏は今回の選出に対し、以下の抱負を語った。
「プレスリリースは『架け橋』です。未来の技術を現代につないだり、街の片隅で起きた小さな奇跡を社会につないだり、誰かのチャレンジを誰かの仕事につないだり。その文章がなければつながらなかった人たちが、つながる可能性を生み出します。プレスリリースによって架かる橋で、社会を、世界を、より良くしていければと思っています」(北見氏)
