ポストCookie時代に対し課題感は高まるものの「理解は不足」
では、デジタルマーケターは、個人情報の扱いについてどのような意識を持っているのか。
マクロミルは、2022年1〜3月に広告会社・ITコンサル・事業会社・メディアの4業界のデジタルマーケターを対象に、Cookie規制に関する調査を実施。国内のデジタルマーケターはCookie規制を現状どのように捉えており、何を課題に感じているのか。調査結果を紹介しながら、齋藤氏が見解を述べた。
まず「ポストCookie時代のユーザーを識別するためのKeyになる情報は何になるか」という質問に対し、「メールアドレス」が63.0%で1位、次点が「ファーストパーティCookieデータ」で57.5%だった。多くの担当者が、この2つの情報を重視しているようだ。広告会社だけは、ビジネスモデルが影響しているのか順番が入れ替わっており、ファーストパーティCookieデータが1位、メールアドレスが2位だった。
また、デジタルマーケティング関連キーワードの認知率については、「IDFA・ADID」が68.5%で1位、「ITP」が66.1%で2位、「コンテキストターゲティング」が54.3%で3位だった。一方で、Facebook conversion APIやATT、FingerPrint、Privacy Sandbox,統合IDソリューション(DAO)などのCookie規制後に対応する際のソリューションに関するキーワードの認知率は半数を割った。
「この調査結果から見えてくるのは、ポストCookie時代のソリューションに対する認識・理解が国内デジタルマーケターにはまだ浸透しきっていないという点です。実際、デジタルマーケターの約4割が、ポストCookieに対するソリューションについて、まだ導入も検討もしていないと回答しています」(齋藤氏)

ただ、ポストCookie時代における課題については、的確に理解している傾向にあった。現状感じている課題として1位に挙がったのが「ユーザーの分析が難しくなる」で59.1%、次いで「ターゲティング精度が下がる」が58.3%だった。
「一般的に、Cookie規制で議論されがちなのは『広告がうまく出せなくなる』というところですが、本質はユーザーの分析が難しくなる点にあります。また、個人情報保護法への対応も課題感として高まっているようです」(齋藤氏)
デジタルマーケターと生活者の間にある、広告に対する意識のギャップ
同調査では、Cookie規制をはじめ、デジタル技術の進化に対してマーケターがポジティブ・ネガティブのどちらで捉えているかについても言及している。技術の発展により、マーケティングは進化するのか、もしくは旧来型のマーケティングに戻るのかでいうと、進化すると捉えているマーケターが73%だった。多くのマーケターは、ポジティブに捉えているようだ。
「業界別で見ると、広告・ITコンサル業界は、旧来型のマーケティングに戻ると感じられている方が多いようです。Cookieの代替ソリューションが見出せていないと感じている方が多いのかもしれません」(齋藤氏)
このようにデジタルマーケターの意識調査の結果について紹介したところで、生活者との意識のギャップに言及した。
調査において生活者(一般インターネットユーザー)とマーケターで意識の差があったジャンルは、「位置情報・Webアクセス履歴・購買履歴・行動履歴・年代」のデータ群の取り扱いだ。多くの生活者が、それら情報の提供や取り扱いに不安を感じている一方で、マーケターはそれほどセンシティブな問題としては認識していないようだ。

「双方の意識のバランスが取れていないと、生活者からさらに拒絶されてしまうのではないかという危機感を持っています。データの扱いに慣れてしまい、その先にいる生活者の存在を忘れてしまわないよう、さらなる配慮が必要です」(齋藤氏)