ポストCookie時代に適応するための2つの方向性
それでは今後、我々はどのようにユーザーを分析し、マーケティング施策を考えていけばいいのか。齋藤氏は「自社が保有するデータと日本市場のミニチュアデータの掛け合わせ」「データクリーンルームを活用しプラットフォーマー内の広告主のデータと自社データの掛け合わせ」の2つの方向性を提示した。まず、1つ目の方向性について次のように言及する。
「皆様の企業でも、継続的に取得している行動データがあるのではないでしょうか。年齢や性別、居住エリアなどの属性を取得・特定できていれば、日本市場のミニチュアデータと合わせていくことで様々な分析が可能となります」(齋藤氏)
日本市場のミニチュアデータとはどのようなものだろうか。齋藤氏は参考として、マクロミルが展開する「EPR」「A-cube」という2つのサービスを紹介した。両サービスとも、データの取得に許諾したユーザーに専用アプリをダウンロードしてもらい、それを通じて各種データを取得している。
EPRは、数百単位のECサイトの購買履歴が取得可能で、主要ECサイトはほぼ網羅している。生活者がどのようにECサイトを使い分けているのかなどの詳細な分析が可能だ。A-cubeは、スマートフォンアプリの利用実態を分析でき、たとえばユーザーを属性で分類し、自社と競合のアプリがどのように利用されたかを比較・分析できる。
「これらのサービスでは、誰が、いつ、どこで、何を、なぜそれをしていたのかといった意識データも取得でき、分析ができるので、皆様の企業で保有されているデータと掛け合わせると、ターゲティングしやすくなります。もちろん、皆様の企業がお持ちのデータだけでも分析は可能です。ユーザーヒアリングを実施し、自社保有データと組み合わせれば有意な示唆を得られるでしょう」(齋藤氏)

まずは「明確に同意を得たファーストパーティデータ」の確保から
次に、齋藤氏は2つ目の方向性として、データクリーンルームの活用について解説した。セキュアな環境を維持しつつ、意識・行動データとプラットフォーマーのデータの組み合わせを推進するものだ。
「セキュアな環境を維持し、データを活用するためには、まずは明確に同意を得たファーストパーティデータが必要になります。許諾の取れたデータはデータクリーンルームとよばれるセキュアな環境下で集計し、分析できるようになってきています」(齋藤氏)
データクリーンルームとは、保護された環境で、収集された情報から個人識別情報を除去し、様々なデータ分析に利用できるようにするデータスペースだ。現在GoogleやMeta、Amazon、国内ではドコモなどの大手プラットフォーム企業が続々と提供を開始している。
一方で、データクリーンルームはどのように活用できるのか、イメージがつきづらいかもしれない。具体的にどのような活用ができるのか。
「たとえば、500名を対象に自社の商品認知度を調査するアンケートを実施したとします。調査結果をデータクリーンルームに入れ込み、プラットフォーマー側で提供される広告主の広告接触データと掛け合わせることで、ブランドリフト調査を実施できます。広告の購買関与度を計測できる購買リフトも購買のサンプル数が豊富であれば分析できますね」(齋藤氏)

齋藤氏は最後に、データを扱う際に持つべきマインドセットに言及し、セッションを締めた。
「Google Chromeは2023年中にサードパーティCookieを廃止すると宣言していましたが、2024年に延期されています。Cookieの終焉まで1年伸びたことにはなりましたが、セキュアなデジタルマーケティングのために、顧客データの明確な許諾は、すぐにでも取り組むべきです。
新しい技術が生まれても、顧客のプライバシー配慮に欠けた取り組みは、デジタルマーケティングの市場を小さくしてしまうことにもなりかねません。テクノロジーをどう活用するべきか、常に試行錯誤しながら前に進んでいきましょう」(齋藤氏)