メディア・企業・読者がともに前に進んでいくPR
インバウンドな思想でメディアや読者と向き合い続けることは、結果としてPRチームの成長、そして事業へのポジティブなインパクトをもたらすと考えています。
たとえば、著者の一人である土井が入社するまでHubSpot Japanに専任のPR担当はいませんでした。PR立ち上げの最初の一年目は、売り上げへの寄与が見えづらいPR活動そのものへの社内理解や、インバウンドにこだわったPRに投資をすることに対して協力を得ることが難しい場面もありました。
HubSpotの場合、そんな悩みの解決の鍵になったのは、お客様からの声の可視化でした。PR活動を開始して半年ほど経った頃から、HubSpotのファンの方がメディア記事をTwitterに共有してくれたり、記事を見て「良記事でした」とコメントしてくれたりすることがグンと増えたのです。
それらの反応をソーシャルリスニングという形で収集し社内に共有したことで、HubSpotの認知が広がっている実感、そして「ファンを作ること」が結果的には事業へのインパクトにつながるというPR活動の意義が浸透し、社内メンバーの賛同が一気に増していくのを感じられました。
インバウンドなPR活動は、一朝一夕で実現するものではないと思います。記者や読者との信頼を紡いでいくためには中長期で戦略を考えていく必要があることからも、その場限りの数字達成を追うのではなく「長期で持続可能な状況」を作っていくための組織づくりやゴール設定が重要でしょう。
もちろん「長期で持続可能な状況」を作るためには足元の活動で成果をきちんと出すことも含まれます。「短絡的な数字だけを追わない」「相手に先に価値を提供する」というインバウンドの思想は「きれいごと」のように捉えられることもあり、「緩い」ビジネスのスタイルであると考えられることもあります。
しかしHubSpotのPRチームで掲げているKPIは決して簡単なものではありません。数字を疎かにすると事業が疲弊してしまいますから、高いターゲットを設定し、結果にはこだわり続けています。その上で、個々が疲弊しないように「自分たちにしかできないことは何か」を考え続け、それ以外の部分は仕組みづくりで効率化したり、外部パートナーさんの協力を仰いだりして体制を整えるようにしています。さらに、成長しつづけるためには予算面での「投資」も欠かせないでしょう。
短期的ではなく長期的な目線でインバウンドな活動を継続していれば、いずれ必ず事業に返ってきます。インバウンドなメディアリレーションズにとって大切なのは、自社は社会にとってどのような存在なのか、そして自社が社会に提供できる価値が何なのかを考え続けることです。
そのような姿勢で取り組み続けるメディアリレーションズは、結果として「メディア」と「企業」の信頼関係を強くし、「メディア」とその先の「情報の受け手」の役に立ち、気づきをもたらし、三者が関わり合いながら前に進んでいく「三方よし」の状態の実現につながるのではないでしょうか。
明日から使える思考のヒント
自社の宣伝ではなく、自社は社会にとってどんな存在なのか、自社が社会にもたらすことのできる価値は何なのかを考える。そして信頼に足る情報発信を通して社会と「つながる」ことが、インバウンドなパブリックリレーションズ。