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顧客の購買を後押しするサイネージ活用のポイントは?カルビー松永氏が語る、リテールメディア実証実験

サイネージの設置で購買数が増加

 それでは本題に入ろう。今回の実証実験の目的は、「サイネージの広告配信の有無で顧客の購買行動に変化があるか?」を明らかにすること。合わせて、商材による違いも検証された。

 実験店舗は、ドラッグストアのココカラファイン。売り場は、陳列棚の通路に面するエンドと呼ばれる場所で、商品はカルビーの「ポテトチップス ハーブ香るロティサリーチキン味」を採用した。実験は30日間行われ、最初の15日間はサイネージにココカラファインのロゴのみを掲載、後半の15日間は商品広告を配信する。広告には、FARでアイキャッチ、NEARで商品訴求、PICKで食シーンを想起させるクリエイティブを用意。各クリエイティブとも、文字数を抑え、ビジュアルで商品のおいしさを表現することにこだわったという。

 「おいしさを訴求するFARでは、ローストチキンのおいしいイメージを打ち出し、商品訴求のNEARでは、“今しか食べられない”と数量限定をアピールしました。そしてPICKでは、お客様にベネフィットを伝えるため、“自分時間のご褒美”という食べるシーンを訴求しています」(松永氏)

 では、実験を行った対象店舗と比較店舗の販売指数(販売活動に投入された販売店が売上をどれだけ達成したかを示す指標)からサイネージの効果を見ていこう。

 サイネージなし(広告配信なし)の販売指数を100としたとき、サイネージありは74、サイネージを置かない比較店舗は52と、対象店舗の売り上げの約20%がサイネージの効果であることが確認された。さらに対象店舗と比較店舗の販売数を比べると、対象店舗のほうが1.2倍になっていたという。

 続いて、棚前行動の分析から、販売数に違いが出た要因を掘り下げる。

 ここでは、通過・立ち止まり・接触・購買のプロセスからそれぞれの人数を出した上で、その前後の行動に対する割合をCVRと定義し、サイネージの効果の有無を比較していく。たとえば、立ち止まったのが100人で接触が20人であれば、接触のCVRは20%と考える。

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 サイネージの有無でCVRを比較すると、“商品に触れて購入した”を意味する購買で、サイネージありのほうが3%高いという結果が出ていた。この結果を見て松永氏は、「購買数1.2倍の要因はサイネージにあり、お客様がサイネージを見て、“この商品が欲しい”と思われたことがサイネージの効果だと捉えています」と見解を述べた。

商材の購買特性に合わせたクリエイティブで購入を後押し

 次に、商材によるサイネージの効果の違いを見ていく。

 スーパーやドラッグストアでは、目的を持った買い物だけでなく、店内を回遊していく中で「なんとなく」手に取ることも多い。そこで次の実験では、「日雑メーカーも参加し、商材の違いでサイネージの効果に変化が見られるか」を追った。

 今回も売り場はエンドで、1.エンドのみ、2.サイネージ(広告)、3.サイネージ(広告)とQRコードを読み取るタイプのクーポンインセンティブとのセットという、3つの条件を設定した。そして配信コンテンツには、「商材によって顧客が購買決定する理由は異なるのではないか?」という仮説を反映させ、カルビーは衝動欲求×食品(夏限定商品「夏ポテト」)、日雑メーカーは機能理解×非食品のクリエイティブを用意している。

 「たとえばカルビーのような食品や嗜好品は、非計画購買であり、“食べてみたい”のような衝動欲求が強い商品です。対して、日雑メーカーの商品は今買うべき理由や機能理解が重要ではないだろうか? この仮説を踏まえたコンテンツを制作しました」(松永氏)

 では、カルビーの実験結果はどうだったのだろうか。

 3つの条件のうち、もっとも購買のCVRが高かったのは、3.サイネージ(広告)とクーポンのケースだった。さらに実験店舗と比べた場合も、2.サイネージ(広告)と3.の購買CVRは高く、購買実績にもその影響が現れている。

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「サイネージ無し」の状態を100%とし、比較した伸長率
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 さらに棚前行動の詳細を見ていくと、2.サイネージ(広告)では接触のCVRが高く、商品に興味を持ったことで、購買につながったと推測された。一方、3.サイネージ(広告)とクーポンの実験では、購買のCVRが高く「商品を買う」意思決定の早さが売り上げにつながったと考えられる。

 滞在時間の分析からも見ていくと、2.サイネージ(広告)では、5秒以内または16~20秒滞在する人が多く、サイネージに対して「興味はない」「気になるので見てみる」という行動の二極化がうかがえた。また、3.サイネージ(広告)とクーポンでは、6~15秒滞在する人が多かった。これは、クーポンの情報がFARのタイミングから出ているため、と見られている。「インセンティブを提供するタイミングも重要」と松永氏は指摘した。

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 日雑メーカーの実験でも、同様にサイネージやインセンティブの有無により購買への影響が見られたという。以上の結果を踏まえ、松永氏は「商材の購買特性にあわせてクリエイティブのメッセージを変えることは、購買の後押しにつながる」と商材によるサイネージ効果の実験を総括した。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/03/16 07:00 https://markezine.jp/article/detail/40938

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