自らブランドを立ち上げ、新しい売り方を実証していく
──プロダクトの重要性が高まるとともに、売り方にも変化が求められているのですね。
そうですね。実は今、MDでも自社ブランドを立ち上げて商品開発に力を入れています。ブランド支援が本業である僕らが一から商品を作って売り出すことで、ノウハウの実証にもなりますし、コンサルティングのバリューも高まると思っています。
その一つが新しい東京土産の開発です。開発のきっかけは「東京の人が誇れる東京土産がない」と感じていたことだったのですが、過程で新たな気づきがありました。まずは東京らしいものをと思い、江戸・徳川にまつわるものを開発しようと、徳川家康が愛したという果物、栗とぶどうとみかんを使ったお菓子の試作品を作りました。美味しかったので「これはいける」と思ったのですが、実際に消費者調査をしてみると反応が芳しくなかったんです。
というのも、まったく新しい食べ物なので味が想像できない。知らないものはむしろ試したくないという消費者の傾向があったんですね。その目線でお菓子を市場調査してみると、確かにまったく新しいジャンルの商品を一から作っていることはあまりなく、ヒットしているのは「飲むショートケーキ」や「冷やして食べるクリームパン」といった、既存の王道ジャンルの食べ方・食感・色を変えている商品だと気づきました。

そこで、「とろん」というお菓子の食感に着目。通常とろけていないものをとろけさせるお菓子会社にしようと方向性を決めました。そして「とろけている」という意味の「フォンダン」をブランド名に入れて「東京フォンダン堂」としてブランド展開することにしたんです。もしかしたら今後この仮説すら変わっていくかもしれませんが、そのダイナミズムがおもしろいと思っています。
そしてマーケティングにおいては、先ほどのとおり「消費者の間でいかに話題にするか」というコンテンツ的アプローチを重視しています。「とろける」テクスチャーのお菓子というのはプロダクトを作っているようで、消費者がシェアする文脈を作っているわけです。「フォンダン堂のとろけるやつ買った?」という会話が生まれるように、プロダクトと話題化をセットで考えて商品を開発しています。
ちなみにこのブランドおよび商品を作る過程をシェアしたいと思い、「MDがどうやって東京土産を作るのか、一から全部見せます」という名目でFacebookグループを作って、日々取り組みを発信しています。オンラインサロンのようになっていて、現在1,000人以上がコミュニティに参加しています。これも、広告ではなく広報的なアプローチで話題化の一助になっていると思います。
「若手マーケターと言えば石井」になる
──最後に、2023年の展望をお聞かせください。
2023年は、自社の商品をすべて安全にローンチすることが目下の目標。東京土産に関しては「東京駅で一番売れているお土産」を達成したいと考えています。定性的な目標で言うと、「新幹線の隣の席の人が自分の商品を持っている」イメージです。
また個人としての挑戦は「若手マーケターと言えば石井」と言われるようになることですかね。30歳前後の有名なマーケターで、目立った人はまだいないと思っていて。実際に手を動かしてブランドを作って成功させているような若手として、注目されると嬉しいなと思います。そのためにも東京土産を成功させたいですね。