「サステナブル」は、むしろ、言わない
「サステナブル」の標語も次のステージを迎えている。サステナブルの表現は、企業公言としてわざわざ押し出されると、恥ずかしさをともなう用語になってきた。サステナブルという用語の新風を巻き起こしたD2Cアパレルの「Everlane」も、既にこれらの標語の説明を店舗POPからは「一切」消している。
同様事例として、プラスチック包装を減らすコンセプトのセレクトショップ「Package Free」は、“Zero Waste Lifestyle Store”を公式サイトのタイトルタグに掲げている。ところが実際の店舗ではサステナブル表記すらない。スタッフに質問すると「(小声で)サステナブルって、あたりまえ過ぎて(聞かないほうがいいわよっ)」と耳打ちされるほどの徹底ぶりだった。
日本でも、(自社の)店舗スタッフや現場の従業員が、このような自発的な姿勢で他者(来店顧客)に向けて発言するようになるのも間近と感じる。たとえばサッカーのワールドカップの会場でゴミ収集をしている日本のサポーターが「スゴイ」と評価されようとも、自らわざわざ「すごいでしょ」と公言はしない姿勢として想像した。
創業者CEO辞任こそが、次なる投資、ネクストステージを見せる
冒頭で触れたCasperの「創業者」が辞任し次のCEOに後継しているリレーは、他のD2Cユニコーンでも「頻繁に」見受けられる(図表1)。これらの創業者CEOたちは「追い出された」「辞任に追い込まれた」など(被害者的な)解釈だけでなく、「カイシャを見事に売った(手放した)」側の人物という、「ま逆」の送り出しの美しい側面に気づいておきたい。
CEO(創業者)が売るモノは売上や商品を超えた「カイシャ(事業理念)」であり、その理念やその種が、次の苗を生むステージに昇華すれば譲る(次の事業を複利で倍々にする)ことが基点だ。創業時から「売る覚悟」で始めているからこそ、スパッと譲れる。
これは日本で見本とされていた「超大手」の創業者が、なかなか事業を手放さない様子と比較すると対照的であり参考になるだろう。米国D2C事業は「種を分け与えて次の苗を増やす」姿勢で、「反動」を活かしながら前進させているようだ。
