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米国最新事情レポート『BICP MAD MAN Report』

米国D2Cユニコーンは、「反動」を乗り越えて

「サステナブル」は、むしろ、言わない

 「サステナブル」の標語も次のステージを迎えている。サステナブルの表現は、企業公言としてわざわざ押し出されると、恥ずかしさをともなう用語になってきた。サステナブルという用語の新風を巻き起こしたD2Cアパレルの「Everlane」も、既にこれらの標語の説明を店舗POPからは「一切」消している。

 同様事例として、プラスチック包装を減らすコンセプトのセレクトショップ「Package Free」は、“Zero Waste Lifestyle Store”を公式サイトのタイトルタグに掲げている。ところが実際の店舗ではサステナブル表記すらない。スタッフに質問すると「(小声で)サステナブルって、あたりまえ過ぎて(聞かないほうがいいわよっ)」と耳打ちされるほどの徹底ぶりだった。

SoHoにあるPackage Freeの内観と、BICPメンバーが店舗スタッフと会話する様子(2022年10月末、Kazuki Nishimura撮影)
SoHoにあるPackage Freeの内観と、BICPメンバーが店舗スタッフと会話する様子(2022年10月末、Kazuki Nishimura撮影)

 日本でも、(自社の)店舗スタッフや現場の従業員が、このような自発的な姿勢で他者(来店顧客)に向けて発言するようになるのも間近と感じる。たとえばサッカーのワールドカップの会場でゴミ収集をしている日本のサポーターが「スゴイ」と評価されようとも、自らわざわざ「すごいでしょ」と公言はしない姿勢として想像した。

創業者CEO辞任こそが、次なる投資、ネクストステージを見せる

 冒頭で触れたCasperの「創業者」が辞任し次のCEOに後継しているリレーは、他のD2Cユニコーンでも「頻繁に」見受けられる(図表1)。これらの創業者CEOたちは「追い出された」「辞任に追い込まれた」など(被害者的な)解釈だけでなく、「カイシャを見事に売った(手放した)」側の人物という、「ま逆」の送り出しの美しい側面に気づいておきたい。

 CEO(創業者)が売るモノは売上や商品を超えた「カイシャ(事業理念)」であり、その理念やその種が、次の苗を生むステージに昇華すれば譲る(次の事業を複利で倍々にする)ことが基点だ。創業時から「売る覚悟」で始めているからこそ、スパッと譲れる。

 これは日本で見本とされていた「超大手」の創業者が、なかなか事業を手放さない様子と比較すると対照的であり参考になるだろう。米国D2C事業は「種を分け与えて次の苗を増やす」姿勢で、「反動」を活かしながら前進させているようだ。

図表1 有名D2Cスタートアップで創業者CEOが辞任した例:左から、メンズアパレルの「Bonobos」、サブスク・ファッションの「Rent the Runway」、レディスアパレルの「Nasty Gal」、人事プラットフォームの「Zenefits」、美容コスメの「Glossier」
図表1 有名D2Cスタートアップで創業者CEOが辞任した例:左から、メンズアパレルの「Bonobos」、サブスク・ファッションの「Rent the Runway」、レディスアパレルの「Nasty Gal」、人事プラットフォームの「Zenefits」、美容コスメの「Glossier」

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この記事の著者

榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/02/02 09:56 https://markezine.jp/article/detail/41066

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