名刺の取り込み枚数6割減を経て事業ピボットへ
──マーケティング業務にも多大な影響が生じたのではないでしょうか。
コロナ禍に入り、マーケティングのアプローチももちろん変わりました。当社の場合はオフラインイベントのROIが特に高かったため、それらの打ち手が全て封じられてしまった影響は大きかったです。「来月は状況が好転するのでは」と期待を込めて展示会の出展準備を進めるものの、直前でキャンセルすることが続きました。

状況は困難でしたが、社内では乗り越え方が建設的に議論されていました。データに基づいて分析したところ「落ち込んだ取り込み枚数はまた持ち直す」という予測が出たのです。実際、60%以上マイナスした取り込み枚数は1ヵ月半でマイナス13%まで回復しました。
──2022年4月にSansanのプロダクトコンセプトを「法人向けクラウド名刺管理サービス」から「営業DXサービス」へと刷新されたそうですね。刷新までの流れをお聞かせください。
プロダクトコンセプトの変更を検討し始めたのは、コロナ禍が到来してすぐのことです。「このコンセプトにした場合、必要な機能は何か」「開発期間はどれくらいか」「お客様の反応はどうなりそうか」など、約1年半かけて議論しました。
新コンセプトの方向性がある程度固まった頃、マーケティングチームでは具体的な訴求方法を考え始めました。2021年6月からWebサイトやテレビCMの見せ方について検討を重ね、2022年4月にSansanを「営業DXサービス」として打ち出した流れです。
苦労したのはプロダクトマーケティングの意識づけ
──Sansanを営業DXサービスたらしめる新たな機能も追加されたとか。
企業サイトの情報や有価証券報告書、役職者情報などを集約した「企業DB」と、取り込まれた接点情報を基に取引リスクを自動検知する「リスクチェック」に加え、セミナー・イベント運営に必要な一連の業務をワンストップで行える「スマートセミナー」の3つを新たに搭載しました。
──事業コンセプトをピボットするにあたり、柳生さんが苦労した点があれば教えてください。
メンバーをモチベートするマネージャーの責務が問われた時期だったと感じます。組織の中には新しいプロダクトを世の中に打ち出した経験がなく、お客様の困りごとを発掘する方法や、プロダクト開発からマーケティング施策実行までの一連の流れがイメージしにくい人も少なくなかったのです。そこでマーケティング組織の体制を整備し、ゴールを明確に伝えた上で、プロダクトマーケティングの意識づけを行いました。