ランチの栄養重視が加速
――続いて、食に関する変化はいかがでしょうか。
職住一致を選択する人が増えると、食事、特に仕事時間と関係性が強いランチに対する価値観が大きく変わるかもしれません。オフィスや外で過ごす時間が多かった頃は、同僚とのコミュニケーションを兼ねてランチに行くなど、栄養を取る以外の役割を果たしていました。
もちろん、以前からクイックランチやデスクランチなど、効率的に食事を済ませる動きはありましたが、そのときも栄養重視というよりは好きなものを手短に食べることが重視されていたように思います。オフィスでどれだけテイクアウトのカツ丼を食べたかしれません。
しかし、昨今完全栄養食と呼ばれる商品が数多く登場するなど、効率的な栄養摂取を重視する傾向が出始めています。サプリメントだけで過ごすシーンをSF映画で見たことはありましたが、食事の中核は栄養補給で息抜きや交流はいらないという価値観を自然に捉える層が生まれていると感じています。
相互作用する身体から機能する身体へ
――ウェルビーイング(幸福で肉体的、精神的、社会的すべてにおいて満たされた状態)やウェルネスといったキーワードが注目され始めているのも、似た背景があるのかもしれませんね。
健康であることはいつの時代も重要な事柄でしたが、パフォーマンスの高い状態が健康であるとなったのが近年の変化だと思います。昔「24時間戦えますか」というキャッチコピーがありましたが、長時間働けることが一種のウェルビーイングだという時代だったのかもしれません。
しかし、今は免疫強化に関する商品やY1000のように睡眠を改善する商品が話題になるなど、活動中のパフォーマンスを最大化することが大事になっています。
先ほどランチの目的が息抜きや交流から栄養補給にシフトしていると話しましたが、身体は他者とのインタラクション(相互作用)から、自身のパフォーマンス(機能)へと、期待される役割の中心が変化しているのかもしれません。