2013年からの10年で起きた変化
2013年、レイ・イナモト氏の『Fast Company』誌への寄稿の中で、「The End Of Advertising As We Know It-And What To Do Now(広告の終焉:さらに今、できること)」が提唱された。2013年当時とは、当時ユーザー数3,000万人ほどだった「Instagram」が、「Facebook」によって約10億ドルで買収された頃だ。まだまだSNSの概念すら薄い頃に、下記を示唆していた。
「広告の終焉:さらに今、できること」の要約
- インテグレートからコネクトへ:広告メディアをインテグレート(統合)するキャンペーン発想から、オーディエンス+企業+メッセージを永続的にコネクトさせる「事業」としての取り組みへ。
- ブランド側の物語から人々が中心の物語へ:カンヌで賞賛を得た受賞作の数々に共通するのは、「ブランドの物語」ではなく「人々の物語」に軸がある点だ。
- 360度から365日へ:消費者を360度で全方位から囲い込むというのは企業側の幻想であり、無駄が多い。多方面での媒体露出が良しとされる時代は終わっている。新時代における基準とは、永続性や志、そして社会に与えるインパクトである。
- メディア依存からビジネス発明へ:既に広告業界はメディアに依存するビジネスモデルではない。クリエイティビティとイノベーションを用いて、明らかな問題に「思いもよらない解決策」を見つけるか、「思いもよらない問題」を見つけてその解決策を提示するか、という事業創出に向かっている。
いかがだろう。2023年、今読み返しても、レイ・イナモト氏の先見性には驚く。この同時期に、横山隆治氏が『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)を「広告マンの8割はいらない」という帯で発刊していた(筆者共著)。
この書中においては、さらに具体的な「広告ビジネス未来」を開示していたが、上記紹介のレイ・イナモト氏の視点と重なる点がある。
たとえば、横山氏の著書では「IT、コンサルティング系企業が、異業種ながら広告・マーケティング領域に参入してくる」と指摘していた。これは、コンサル系企業の「Accenture」「Deloitte」「PwC」「IBM」などが、マーケティング事業領域に台頭してくる以前の指摘だ。近年、コンサル企業がシステムインテグレーターとしての強みを持ちつつ別会社を設立してマーケティング領域に進出している様子は、レイ・イナモト氏が指摘していた「メディア依存からビジネス発明へ」の示唆に近い。
MAD MAN REPORT 60分濃縮セミナーを開催!
2月28日(火)に、MAD MAN REPORT著者の榮枝洋文さんによるウェビナーを開催します。本稿をさらにパワーアップさせる形で「重要だけど見落としている数字」に目を向け、データ市場の潮流を読み解く60分です。貴重なこの機会をお見逃しなく……!