過去の「変化」から、未来への応用「変数」を見つける
これらを例示するのは、過去を振り返って「変化」予測の的中度を観察するためではなく、さらに未来に応用できる「変数」を見つけるためだ。広告や広告会社、マーケティングの定義や概念は、過去100年を越えて常に変化してきた歴史や流れがある。ほんの10年ほど前からの変化を実感しているなら、さらに次への展開(変数)を考えたい。
たとえば、事業が躍進している「サイバーエージェント」や「Accenture」を見ると、「広告」「マーケティング」を提供する企業と形容するには少し当てはまりにくい概念や商流が生まれている。「広告事業」という狭義で見れば、サイバーエージェントの事業全体における「広告」セグメントの利益は約3割に過ぎない。既に広告よりも「ゲーム」セグメントの利益のほうが大きく、事業のコアになっている。
Accentureに至っては、グローバル事業を営む(巨大)クライアントに対するコンサルティング事業が、元々の土俵だ。そのほんの一部門が「Accenture Interactive」としてマーケティング領域に隣接してきた。現に、米国『AdAge』誌による集計で、Accenture Interactiveは広告会社ネットワークの中で世界の売上総利益高の1位を7年連続で保持している。広告会社の中で巨人とされていたはずの電通だけでなく、グローバルで100年以上の歴史を持つ「BBDO」や「Young & Rubicam」「Ogilvy」なども一気に抜き去っている立ち位置だ。ちなみに、Accenture Interactiveは、2022年に「Accenture Song」という名称に変更している。これも「コンサルのAccenture」の色から拡大させる意図(必然的な脱皮)として見ておきたい。
広告会社側だけでなく、日本や世界のブランド事業側でも新しい定義が日々生まれている。たとえば、コンサルと合弁会社を設立したり、あるいは宣伝部の機能を分社化したり(例:資生堂)、反対に本社へ再統合したり(例:トヨタ)、さらにホールディングス傘下企業の宣伝部を廃止・統合した新会社設立のケースがあったり(例:サントリー)と、多くの組織変化も見慣れたところだ。これらのブランド事業側の変化の例は「川上側の思考の変数」として大きなシグナルを持つ。隠れた変数のようなものを見つければ、未来への「新ビジネスの発明」として応用できるだろう。