商品ブランドと企業ブランドの両方が持つ重要性
ここまでは商品ブランドの話をしてきたが、同時に企業ブランドも重要性を増していることも認識しておかなければならない。
これはSDGs、ESG、パーパスなど、社会や環境、生活者に対する責任や存在価値を、これまで以上に問われるようになっていることが一つの理由だ。また、商品ブランドの重要性が増しているのであれば、商品ブランドを支える役割を担う企業ブランドも重要になるためである。
このように企業ブランドの重要度も増しているのだが、商品ブランドと同様に、課題を抱えている企業が多い。「何を目標とすればよいかわからない」「その目標を達成することで、自社にどのような価値があるかかがわからない」という課題をよく聞く。また、商品ブランドを担当する部署から、効果がわからないのであれば、広報・広告予算を商品ブランド側へ回すべきという意見も多くなるようだ。
こういった事態を防ぐためには、企業ブランドが商品ブランドにどのような貢献をできているのかについて把握しておきたい。
三つの項目でブランド力を測定する「NRI BRAND INDEX」
こういった商品や企業のブランディング活動における課題を解決すべく、NRIではオリジナルのブランド力測定サービス「NRI BRAND INDEX」(以下、NBI)を開発した。開発においては、これまで多数の企業向けに実施してきたブランドコンサルティングの知見と、アドバイザーとして慶應義塾大学商学部で消費者行動論・マーケティング戦略を専門に研究する清水聰教授の助言を基にしている。
NBIは、競合との差別化やブランドの固有性により得られる、現在及び将来の実利の大きさとその確度の高さを「ブランド力」と定義。この考えのもと、ブランド力をスコア化して定量的に評価することを目指して開発している。
また、NBIは過去から蓄積されたブランド力を示す「Baseスコア」、今後のブランド力の方向性を推測する「Leadスコア」、直近のブランド力の変動を示す「Trendスコア」の三つの指標、およびそれらから合成する総合指標「NBI」で構成されている(図3)。
これらを測定・算出することで、当該商品・サービスについて、現在のブランド力だけでなく、ブランド力の将来性についても把握することができる。以降、図4で列挙したNBIの四つの特徴を紹介する。
(1)商品ブランドのブランド力を測定可能
現在、世の中にあるブランド力測定調査は存在するが、その多くは企業ブランドを測定することに重きを置いたものが多い。一方、NBIは、商品ブランドのブランド力を測定することを第一の目的に据えて開発をしている。また、企業ブランドのブランド力も商品ブランドと同じ形式で調査することができる。加えて、企業ブランドが商品ブランドにどの程度影響を及ぼしているかを測定できる仕組みも用意しており、商品ブランドへの貢献度や、どのような点が寄与しているかを分析できるようになっている。
図5は、自動車のSUVカテゴリーにおける企業ブランドの商品ブランドへの貢献度の算出結果である。同図によると、同一カテゴリー内でも商品ブランドによって企業ブランドの影響度が異なることが見て取れる。
なお、企業のブランドイメージの影響度においては、高ければ良い、あるいは、低ければ良いということではなく、意図通りになっていることが望ましい。
企業のブランドイメージを効率良く商品のブランドイメージに浸透させるためには影響度が高い方が良いが、企業ブランドとは異なるブランドイメージを商品ブランドにつけたい場合には影響度が低いほうが望ましいためだ。
出所:NBI2023(Web調査、2023/2)
