若年層の顧客獲得が喫緊の課題に
1908年に創業した貝印では、包丁などの家庭用刃物以外に、カミソリや爪切りといったビューティーケア用品も扱っている。また、プロフェッショナルが使う道具も取り扱っており、縫製はさみや医療用のメスなどがその一例だ。
創業から100年以上が経つ老舗メーカーの顧客層は、どのようなものなのか。同社の齊藤淳一氏は、所属する広報宣伝部で毎年行っている市場調査の結果を共有する。2019年に会員サービス「Club KAI」のメンバーら1,263人を対象にリサーチを行った結果、顧客の平均年齢は50歳であることが判明したそうだ。
2022年には16~69歳の男女1,200人に貝印の認知度調査を実施。「貝印を知っているか」との質問に「はい」と答えた人の割合は、20代では20~30%に留まったという。齊藤氏はこの二つの調査結果から、若年層における認知の獲得を喫緊の課題と捉えた。
ブランド認知が不十分だと判明
認知度調査では、若年男性600人に「貝印のカミソリを知っているか」とも質問。その結果、「知っている」と答えた人は19.8%と2割を下回った一方、パッケージを示しつつ「このカミソリを見たことがあるか」と質問したところ、「見たことがある」と答えた人は25.7%に上った。
この結果を受け、齊藤氏は「製品を使ってはいるが、貝印を知らない層」に着目。この層にブランドを強く訴求し「貝印は知らなかったけれど、実は自分の好きな爪切りやカミソリは貝印製だった」というシーンを創出していこうと考えた。そして、貝印の認知度向上を目指して行った施策が企業広告「剃るに自由を」だ。
同広告は、処理されていない脇毛を見せる女性のビジュアルと「ムダかどうかは、自分で決める。」というキャッチコピーが特徴的だ。齊藤氏は「広告で伝えたいメッセージをニュートラルな気持ちで受け止めてほしい」と考え、実在するモデルではなくCGで女性を表現した。