ABTマーケティングが進めるリテールメディア
インターネットユーザーが残したクッキーを広告表示に利用する、いわゆる「サードパーティクッキー問題」への対応が各社で求められている。そこで、改めて価値の見直しが行われているのが、ユーザー自身がデータ使用を許諾して提供する「ファーストパーティデータ」だ。
年間アクティブユーザーが約7,000万人にもなるという「Tカード」を運用するCCCMKホールディングスの荒木裕次氏は、その重要性について次のように話す。
「年々、個人情報に関する規制が強化される今、ファーストパーティデータの価値も日増しに高まっています。中でも、その活用場所として海外で最も注目を集めているのが『リテールメディア』です」(荒木氏)
荒木氏が所属するCCCMKホールディングスとオートバックスセブンは、2017年に新会社ABTマーケティングを設立。同社は独自のビッグデータ収集とその解析により、売上の拡大と効果的な戦略立案を得意としている。そんな同社が近年注力しているのが、この「リテールメディア」だという。
先述の通り、CCCMKホールディングスの「Tカード」の年間アクティブ数はかなりの人数におよび、Tポイント連携先の購買情報に基づく370項目以上ものライフスタイル傾向データが収められている。一方のオートバックスセブンが保有するデータは、直近3年以内に取得した1,300万人の会員購買データと会員保有車両データだ。
これらの両社のデータを掛け合わせることで、より精度の高いターゲットアプローチ策が提供できるという。もちろん、ABTマーケティングが保有する顧客データとクライアントの自社データを合わせれば、アプローチユーザー数をさらに増加させることも可能だ。
乗り換え補足台数は300万台超、膨大なデータベース
CCCMKホールディングスとオートバックスが持つデータはそれぞれどのようなものか? 荒木氏は特徴を紹介する。
オートバックスのデータベースは、「カーライフデータ」だ。住所、性別、年齢、メールアドレスといった基本属性データに始まり、全国約600店舗のオートバックスにおける購買履歴、車検満了月、所有するメーカーや車種などの車両データからなる。
一方、CCCMK ホールディングスのデータベースは「ライフスタイルデータ」。Tポイント提携企業の購買履歴や、顧客DNA情報(Tカードの利用履歴から、機械学習によって会員の志向性をスコアリングしたデータ)からなる。そこには、マイカー乗り換え前の車種や、検討中の車種といったアンケートデータも含まれる。
国産車のデータは、主要メーカーのすべてを網羅し、車種数は700を超えるという。台数にして1,000万台超だ。また、輸入車も主要メーカーすべてを網羅し、700車種弱の約50万台分を登録しているという。乗り換え補足台数は300万台超、車検時期を補足する台数は約1,000万台にもおよぶ。
これらの膨大なデータベースを活用してABTマーケティングが取り組むのが、メディアアプローチだ。その内訳は、上述したデータの掛け合わせから割り出す「ターゲティング」と、メディア同士の掛け合わせによる「セールスプロモーション」からなる。
「セールスプロモーションは、リアルメディアとデジタルメディアを使って行われます。リアルメディアはDMや店頭メディアなどを指し、デジタルメディアは、ターゲティングメールやTカードクーポンなどの販売促進ツールと、Yahoo! JAPANやGoogleなどとのデータ連携からなります」(荒木氏)