ケースを活用する3つのポイントとは?重要なのは「再現性」
それでは、ケースあるいは事例をどのように活用していけばよいのだろうか?田中氏は、「再現性のある成功要因(エレメント)を取り出し、相互にどう関連しているかを見る」ことがポイントだと述べた。加えてエレメントは相互に関わりあっているため、成功した事象のエレメント同士の関連を見るのも重要だという。
たとえば、ケースから事業フェーズごとの戦略を学ぶことは、自社での再現性があり意味ある学びになる。一方、「たまたまヒットする広告が打てた」など予測をしきれない部分は、再現性のないものになる。
田中氏は、失敗事例の活かし方についても言及。基本的に、失敗事例は公開する企業も少なく収集自体が困難だ。そのうえトップマネジメントの思惑など、要因も明確になっていない部分が多分にあるケースも多い。したがって、失敗事例に学ぶのは通常難しいといえる。ただし、その前後に起こったことも合わせて考察すると学びが得られることもあると田中氏は加えた。
ケース・事例の活用について、これまでの説明をふまえ田中氏は以下の3つをポイントとして総括した。
1.ケースには種類がある、学ぶ目的に合ったものを選択する必要がある
2.ケースの底流にある市場環境や関係者の思惑も含めて学ぶ
3.成功事例をそのまま模倣しても成功は保証されない
他社の成功事例より「自社の失敗事例」
またメディアの視点から、ケース・事例と向き合い実務に活かすための3つのポイントを安成が解説。まず1つ目として、他業界の事例もチェックすることを挙げた。自社の業界事例だけにこだわるのではなく、他業界であっても「これを自社でやるならどうすればよいのか」を考え、企画書に落とし込んでみよう。
2つ目は、記事に書かれていない要素を探ること。事例取材では、事例先企業があえて話さないポイントやオフレコの内容なども多分にある。その欠けた要素に気づくためには、自社で取り組んだ時にどうなるか実際に考える中で気づきやすいという。したがって、ポイント2つ目に取り組むきっかけとして、ポイント1つ目で挙げたように自社の企画書に落とし込んでみることが効果的だ。
3つ目として、他社の成功事例より自社の失敗事例がポイントとなる。自社の失敗事例からの学びは多く、その振り返りでノウハウを蓄積することで得られるものは多い。「ぜひ自社のケースを作る意気込みで、実務に取り組んでいただければと思っております」(安成)
また八塩氏は、実践の場におけるケース・事例との関わり方について「実践をフレームワークで見ると成功や失敗の要因がよく見える」点にも言及。「理論とフレームワークはビジネスの実践の現場で大いに役立つし、裏切らないと思います」と語った。