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MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2022 Retail

リテールテックの現状整理で見えてきた、小売とメーカーの勝ち残る術

今存在しているリテールテック&できることとは?

 では具体的にリテールテックにはどのようなものがあるのだろうか。田中氏は「あくまで一例です」としながら、以下のスライドを使い現状のリテールテックを整理した。

 「AIカメラやスマートレジ、サイネージ、ロボットの他、最近ではドローンや自動運転を使った配送の実証実験が行われています。それもAIを活用し、需要層や動線分析を行いながら進めています」(田中氏)

 では、現在はどのリテールテックが注目されているだろうか。

 まず、ユーザーに浸透している代表例として挙げられたのがストアアプリだ。ウォルマートのストアアプリは、店舗に近づくとアプリがストアモードに切り替わり、店内地図を表示したり、リスト化した商品の最短の巡回経路を表示したりと、便利な機能の数々を利用することができる。もちろん決済や配送、返品手続きもアプリ上から行える。

 「ストアアプリの場合、内容の更新や新サービスの追加など更新が鍵になります。ウォルマートアプリは多い時には月10回以上も更新しており、ユーザーニーズに合わせて進化しています。これがストアアプリ浸透の肝になります」(田中氏)

 もう1つ注目されているのが、BOPIS(Buy Online Pick up In Store)という新しい買い物スタイルへの対応だ。BOPISはコロナ禍により「非接触で買い物がしたい」というニーズが増加して誕生した新しいスタイルで、オンラインで購入した商品を店舗で受け取るというもの。

 ユーザーにとっては、非接触かつ配送料無料で商品の受け取りが可能になり、店舗にとっては来店をきっかけに「ついで買い」のチャンスを得ることができる。日本でも家電や日用品を中心にBOPISを展開している企業がある。

店舗のあらゆる場所に存在するリテールテック

 ストアアプリやBOPIS以外にも、店舗のあらゆる場所にリテールテックは浸透し始めている。たとえば、スマートショッピングカートもリテールテックを構成する要素技術だ。

 ユーザーは普通にカートで買い物をし、専用ゲートを通過するだけで決済が完了するのでレジ待ちのわずらわしさから解放される。またカートに商品を入れていくと合計金額が表示されるので、買いすぎる心配もない。

 店舗側にとっても、スマートショッピングカートによりレジの負担や人件費が削減できるというメリットがある。またユーザーの動線を把握できるので、商品配置の最適化にも役立つ。商品ごとの購買傾向を把握することで、クーポンの発行やお得な情報の提案などサービス強化につなげることもできる。

 また、AIカメラの設置も進んでいる。AIカメラには、店の商品を監視して欠品を防ぐ「商品管理」と、「ユーザー行動の把握」という2つの用途がある。ユーザー行動把握用のAIカメラは、ユーザーの目線や商品の選び方など実際の行動を分析するので、店内広告表示の成果測定にも利用できる。

 その他にも、店舗内で注目されているリテールテックとして挙げられるのは、デジタルサイネージだ。これは最近設置が増えているもので、店舗を広告メディアとして活用するリテールメディアの実現技術として期待されている。デジタルなので、店舗ごとではなく本部主導で広告の配信先を設定でき、One to Oneで広告をパーソナライズして表示することも可能だという。

流通DXが目指す3つの方向性

 こうしたリテールテックの革新により、流通でのDX(デジタルトランスフォーメーション)も日々進化している。田中氏はこの流通DXの目指す方向性について「時代に応じた新しい買い物体験の提供」「業務の効率化による経費削減」「収益のアップ(既存事業、新規事業)」の3つを挙げた。

 新しい買い物体験の提供とは、デジタル・店舗含めて買い物体験をよりシームレスにストレスレスにすること。ストアアプリ、スマートショッピングカートなどの活用により、これまで買い物体験に存在していたストレスポイントを削減したり、BOPISのような非接触の新たな買い物スタイルの確立を支援したりすることを意味する。

 業務効率化による経費削減とは、サプライチェーン全体の効率化を意味する。これまで小売・流通では、メーカーが作った商品を卸が仕入れ、倉庫で管理し、物流企業に流れて物流倉庫や配送に回され、最後に小売店に到達するという流れをサプライチェーンで管理していた。このプロセスに関わるステークホルダーで必要なデータを共有し、在庫を管理すれば、より効率化が進む。

 最後の収益アップに関して田中氏は「デジタルやITの構築・活用により実現できる」と見ている。購買データや行動データで商品の適切なレコメンドにつなげたり、より購買可能性の高いクーポンを配布したりすることで、売上アップに直接つながる施策もあれば、自社で構築したデータ分析基盤や小売業向けシステムを外販していくという新事業創出の可能性もある。実際ウォルマートは自社ECシステムや物流システムを外販している。

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流通の進化に合わせ、メーカーも変化

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/04/17 08:00 https://markezine.jp/article/detail/41974

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