プロセス3.N1インタビューの実施
N1インタビューは、ファミリー会員だけでなく、サービスの利用頻度が高い会員に対して実施しました。まずは、見よう見まねで週に2~3人、1人あたり1~1.5時間、顧客と対話することからスタート。この頃は累計100人へのインタビューを目指していました。
N1インタビューでは、アソビュー!というプロダクトに対してのフィードバックをもらうというよりは、顧客を理解することに重きを置きました。
「どんな時に外へ出かけるのか」「その中で、レジャー施設へ行こうと思うきっかけは何か」「そこに行き続ける理由、行かなくなる理由は何か」など、アソビュー!というプラットフォームを取り巻く生活者が普段どういう暮らしをしていて、どんな行動をしているのか、何に困っているのかといったことを聞き、一人ひとりの1~2年の過ごし方が想像できるようにしていきました。
N1インタビューの質問内容例
ユーザーペルソナの特定
・年齢、家族構成、職業、週休何日か
・休みの日の過ごし方、習い事・遊びにどれくらいお金を使っているか
宿泊旅行、レジャー施設の利用経験
・年に何回くらい・どこに・どのような目的で宿泊旅行に行くか
・宿泊旅行はいつから計画を立てるか
・最近行ったレジャー施設はどこか
・いつどのようなタイミングでレジャー施設に行こうとなったか
・レジャー施設での体験で記憶に残っていることは何か
・レジャー施設での予算はどのくらいか
・今まで行ったレジャー施設のランキングベスト5はどこか、それはどういう評価軸か
・次に行きたいレジャー施設はどこか
・自らレジャー施設に関する情報収集をするか
アソビュー!の利用経験
・どのようにアソビュー!を知ったか
・他の予約サービスを知っているか
・アソビュー!で予約してみようと思ったきっかけは何か
・その時他予約サイトと比較をしたか
・他予約サイトを使ったことがある場合比較してアソビュー!の良いところ悪いところは何か
・サービス利用時に問題はあったか
西口氏の『顧客起点マーケティング』を読むと、「そんなこと当たり前じゃないか」と思えることもあるかもしれません。ですが、私はこの時点で、「顧客と顧客への便益を発見する」という当たり前だと思っていたことが、実際に向き合うといかに大変か痛感していました。加えて、「今までのビジネス経験の中で、自分がいかに顧客に向き合っていなかったのか」も痛感していました。
プロセス4.9segs調査
N1インタビューを一通り行った上で、自社を取り巻く競合(代替品)は何か、便益に繋がるイメージにはどんなものがあるか、サービスを使わなくなる要因は何か、といったことを顧客の声から抜粋し、いよいよ9segsの調査に入ります。
9segsに基づいた市場調査では、アソビュー!や他社ブランドを取り巻くイメージを次のような形で整理していきました。なお、次のステップに入ってからもN1インタビューはずっと継続しています。

また、コンセプトテストについても、N1インタビューの内容を踏まえ、「お得」「商品網羅」「ネット予約(まだEC化が進んでいない産業のため普遍的なニーズだろうと仮説)」などを軸に、次のようなコンセプトを検証することにしました。
コンセプトテストの項目一覧
・人気レジャー施設が最大半額「お出かけの定番、遊園地、日帰り温泉などが最大50%OFF」
・子どもとのおでかけ探しに便利「毎週末、子どもをどこに連れて行こう…を即座に解決!」
・人気観光スポットに並ばず入場「前売り電子チケットで、行列ができる人気スポットに並ばず入場」
・レジャースポット品揃えNo.1「全国7千スポット2万プランの中から選択できる!」
・ネット予約が便利でお得「当日でもワンクリックでネット予約。さらにポイントが貯まる!」
・最安値保証「最安値保証でどこよりもお得。万が一でもキャッシュバック!」
・旅行先で何する?を簡単解決「宿はOK、現地で何して遊ぼう?旅先での悩みを即解決!」
・休日の何する?を瞬時に解決「定番の遊園地や旬の果物狩りなど400種類の遊びから予定が見つかる!」
・一生に一度はやってみたい!が体験できる「富士を見下ろすパラグライダーなど、気になる体験を多数掲載」
・ネット決済で現金不要「ネット決済で、当日は現金不要!クレカのポイントも貯まる」
調査は、初期段階では出費額をできる限り減らすため、調査会社への発注はあくまで調査費用のみで、設問設計や分析はすべて自分たちで行うことに。まずは、5segs/9segsに分類して、自社と競合の差分を見ていきました(その後、ある程度ナレッジが溜まった段階で、M-force社が提供する9segs analyserを導入しています)。

当時はベンチマークしているブランドと比較すると、NPIやサービス利用者におけるロイヤル率に大きな差は見られませんでした。そういった状況の中で、5segs/9segsのセグメント別のイメージの差分や、ベンチマークのブランドとの差分を分析。また、ファミリーやファミリー以外、都市部在住かそうでないかなど、N1インタビューを通して自社の中で整理した区分ごとに調査結果がどうなっているかを丁寧に見ていきました。
結果、サービスリピートの見込みが高いのは、やはりファミリー層であることが判明。コンセプトに関しては、「お得」軸の訴求が最も高評価だったのは想定通りでしたが、「施設に並ばず入場できる」「いつでもネット予約できる」などサービスの機能性も評価してもらえることがわかりました。
特に注目したのは、「子供とのお出かけ探しに便利」というファミリー層のみに刺さるコンセプトが高評価を得たということです。まずは、ファミリー層が価値を感じてくれるようなコンセプトを徹底的に強化することが重要なのだと、改めて意識を揃えました。
