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アソビュー録:顧客起点マーケティングの実践例

【第2回】アソビューはどのように顧客起点マーケティングを実施し、それによって何がどう変わったか

プロセス5.顧客戦略の設計と実践 

 次に調査結果を踏まえて、便益と独自性の強化に向けて、プロダクト開発の優先順位の見直しを行いました。具体的には、「お得さの強化」「施設へ並ばず入場できるUXの強化、施設数の増加」「行きたい場所、やりたいことが見つかる機能の強化」の3点です。弊社の場合、顧客起点マーケティングを始めてから顧客戦略を立てるまでの期間は、おおよそ6~9ヵ月でした。

 内訳としては、アソビュー!のデータ分析に1ヵ月、N1インタビューに3ヵ月、市場調査の設計から分析に2ヵ月、戦略設計に1ヵ月のようなスケジュールです。ただし、データ分析、N1インタビュー、市場調査をステップを切って進めていく中で、大枠の戦略は各ステップでできており、その解像度が高まっていく期間というふうに解釈していただければ幸いです。

 たとえば、「人気レジャー施設へ並ばず入場できるUXの強化」では、日時指定のチケットによる入場制限や混雑整理のサポートを行いました。その際、アソビュー!に蓄積されたデータを用いて、「レジャー施設は繁忙期に施設満足度が低下する」「その要因は待ち時間が体感で1時間以上発生する場合に起こる」という傾向をレジャー施設の皆さまにご説明し、顧客満足度の最大化を両社で実現すべく、提案を重ねていきました

 また、「行きたい場所、やりたいことが見つかる機能の強化」に取り組む際は、最もN1インタビューの恩恵を受けました。ファミリー層が行きつけにしているお出かけスポットに関して、どのような行動や心理状態があるか、かなり具体的に掴めていたからです。たとえば、以下のような具体度です。

・自宅から30分から1時間圏内で、子供と一緒に遊びに行く、行きつけスポットをいくつか持っている

・行きつけスポットは、たとえば大きなショッピングモール。モール内に子供が遊べるキッズパークやゲームセンターがあり、子連れでも気を使わなくていいフードコートやファミレスのチェーン店がテナントにある。もしくは、水族館や動物園がある商業エリアである場合が多い。

・自分の行きつけスポットを中心に毎週末のおでかけを設計するが、季節ならではの体験、たとえばいちご狩りやプール、海、桜や紅葉などの鑑賞、雪遊びなどはできれば子供に体験してもらいたい

 そこで、まずはアソビュー!の年間カレンダーを作成し、どの時期にどんな提案をすると顧客に喜ばれるかを設計しました。この時、営業組織と連携し施設の情報を収集し、トップページやメルマガでタイムリーな情報を提案できるようにしました。

 この他にも、まずはファミリー層に選ばれるサービスになることを目指し、様々なプロダクト改善・強化を行っています

顧客起点マーケティングがもたらす変化

 ここまでで書いた通り、顧客起点マーケティングに取り組むと、狭義のマーケティング(主に4Pのプロモーション)ではなく、どんな施策を行うかのHowでもなく、サービスの便益となるプロダクトのアイデアの強度を高めること、またそれが対象顧客に伝わるようコミュニケーションアイデアを磨くことの2つがいかに重要かがわかります。ここへ投資するお金と時間も増えていきます。

 これは、マーケティングができている会社では“当たり前のこと”なのかもしれませんが、Howばかりにこだわっていた自分には、「戦略の立て方」「投資内容のアロケーションの設計」「施策実行時のフィードバック」など、すべてのプロセスに大きな変化をもたらしました。常に「これは誰に、どんな便益を届けようとしているのか。それは伝わる状態なのか」を自分の中で問いかける習慣ができたように思います。

 このようなアクションを通して、アソビュー!は、今まで鳴かず飛ばずだったリピーター経由の取引額を大きく伸ばすことに成功しました。また、ECで重要とされているリピート指標の1つであるリピーター経由の取扱高比率は、2018年から2022年の4年間で3.3倍まで改善することができました。それにともない、取扱高も年間平均で157%成長してきました。

キャプションを追記
棒グラフは、アソビュー!の取扱高推移、折れ線グラフがリピート取扱高の比率

★次回予告★

【第3回】顧客起点マーケティングをいかに事業土台に組み込むか。PDCAの方法と組織変革

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この記事の著者

宮本武尊(ミヤモト タケル)

2012年株式会社リアルワールド入社。2013年株式会社ビズリーチに入社。オンラインマーケティング、営業企画に従事。2014年アソビュー株式会社に参画。「アソビュー!」の事業管掌の執行役員を経て、2019年取締役執行役員COO。2022年10月より専務執行役員CSMO(現任)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/05/12 09:30 https://markezine.jp/article/detail/42035

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