状況適切度を用いて、新たなコンセプトを評価する
ステップ3:評価
最後のステップは、「評価」です。
自社商品の訴求コンセプトを評価する時は「状況適切度」という指標を使用します。「状況適切度」とは、読んで字のごとく、あるカテゴリーやブランドが特定のシーンに“一般的に”どの程度適していると思うかどうかを問う指標です。自分がどう思うかではなく「一般性」を問うことがポイントになります。
具体的には、コンセプト評価の前段で、対象のCEPにおける商品カテゴリーの「状況適切度」を聞いた上で、コンセプトの評価を回答者に行ってもらいます。その結果、「当初の状況適切度は低かったが、コンセプトを見た結果、そのCEPにおけるブランド評価が高くなる」コンセプトをよしとします。「当初はそのCEPでその商品カテゴリーを使用・飲食することは適さないと考えていたけれども、コンセプトを見た結果、そのCEPでそのブランドを購入・飲食したい」と思われることができれば、現在は他のカテゴリーやブランドにリンクしているCEPに、自社商品のリンクを付け直すことができるポテンシャルが高いと判断できるということです。

さらに、「状況適切度」の指標を用いて、ブランドの継続的な評価を行うことも可能です。CEPの調査後、商品をブラッシュアップしたり、広告・PRなど何らかの施策を展開したりした時、多くの場合、一時的にでも狙っているCEPと自社商品の連想率は高まると思われます。一方で、どれだけ連想率が高まっても「状況適切度」がそれに応じて高まらなければ、その施策の効果は短期的なものになる、とも考えられます。
例を挙げると、少し前に「仕事の休憩時間にアイスを食べよう」という趣旨のテレビCMを複数回視聴する機会がありました。その時に私がアイスのCEP調査を受けたら、「仕事の休憩時間」というCEPでアイスを連想すると回答していたと思います。しかし、今時点では、仕事の休憩時間にアイスを買いに行くことはありません。というのは、身体を急に冷やすと頭が回らなくなる感じがするからです。つまり、私にとって「仕事の休憩時間にアイスを食べること」は思い付きはするものの、適していないと判断されるCEPだと言えます。そして、CMを見なくなってしばらくしたら、思いつきもしなくなることが予想できます。
前後編の重要ポイントまとめ
最後に、本記事で解説した内容を改めて振り返ります。
・ビジネス成長には「市場シェアの拡大」と「カテゴリーの成長」の2つがある。「市場シェアの拡大」は、商品が市場を占める割合を増やすことで、自社商品より相対的に市場シェアが大きい商品との戦いを指す。「カテゴリー成長」は、市場そのものの成長の恩恵を受けて、自社商品の売上も伸長することを指す。
・CEPを捉えることで、「市場シェアの拡大」および「カテゴリーの成長」の双方に余地がある訴求点を具体的に洞察することができる。その洞察において、現状では、すわりが悪くなっているCEPを発見することが肝要となる。
・CEPの調査は、「特定」「発想」「評価」の3ステップがあり、「特定」では、「自己受容感」の指標に基づいて、すわりが悪いCEPを特定することを目指す。「発想」では、すわりの悪いCEPに対して、自社商品がうまくすわるための新コンセプトを発想し、最後の「評価」で、「状況適切度」の指標を使用して、新コンセプトのポテンシャルを評価する。
前後編にわたって、CEPを用いた新しい市場の見つけ方について解説しました。多くのマーケターの皆様にお役に立てれば幸いです。