投資対効果をより明確にしていく
――近年、広告主のニーズや課題感について変化があれば伺えますか。
中村:昨今の社会情勢や経済状況の変化を踏まえ、広告主様は広告の投資対効果についてこれまで以上に高いご関心をお持ちなのではないでしょうか。
弊社では一定以上の広告出稿には無料でご活用いただけるブランド効果測定(ブランド認知度や好意度、検索上昇率などを確認できるツール)を提供していますが、さらなるご期待に応えるべく、広告代理店や調査会社がプライバシーに配慮した形で広告計測ソリューションを開発できるように、パートナーシップ拡充を図っています。
たとえば認知領域について、電通および電通デジタルが所有するテレビの視聴データとGoogle広告のデータを統合し、リーチや接触状況を日次でモニタリングできる「MIERO Digi x TV」、同様の目的のために博報堂DYグループと連携した「Tele-Digi AaaS(Advertising as a Service)」を提供しています。他にも、YouTubeでフリークエンシーの目標を設定することで、機械学習により、1週間のうちにユーザーが広告を見る回数を最適化する「YouTubeフリークエンシー目標設定」をリリースしました。
さらに、態度変容に関するプロダクトも強化しています。2022年9月には、インテージと共同で「YouTube広告とTVCMの態度変容調査」の提供を開始しました。ユーザーのプライバシーを保護しながら分析できるGoogleの「Ads Data Hub(ADH)」を用いて、YouTube広告の接触ログデータと、インテージが提供する全国92万人のテレビCM接触のログデータを統合して計測、分析。それをもとに調査パネルにアンケートを実施することで、YouTube 広告とテレビCMの態度変容効果をクロスメディアで確認、比較が可能です。また、MMM(Makering Mix Modeling)についても、適切なモデリングの形成や分析のお手伝いを進めています。
YouTube広告の効果を出すABCDフレームワーク
――YouTube視聴と一口に言っても、パーソナルな端末とテレビでは視聴者の属性や、視聴スタイル、シーンなどが異なってくるかと思います。広告について、端末によってターゲットやクリエイティブ等をどのように変えていくべきだとお考えですか?
中村:コネクテッドテレビの話に入る前に、まず押さえておくべき基本要素として、広告の目的とそれに合わせた弊社のソリューションを整理していきましょう。
広告主がYouTube 広告を活用する主な目的として、「認知や検討の増加を目的としたブランドリフト」、「特定の検索キーワードの増加を目的としたサーチリフト」、「ウェブサイトへの訪問やアプリのインストールを目的としたコンバージョン獲得」、そして「オンライン・オフライン問わず売上増加を目的としたセールスリフト」があります。
そして、YouTube広告が提供するソリューションとして、それぞれのマーケティング目的に合わせた広告フォーマットがあります。たとえばブランドリフトであれば、まずはリーチの拡大を重視するためにバンパー広告や動画リーチキャンペーン、コンバージョン獲得であれば動画アクションキャンペーンなど、目的に合わせて組み合わせることが可能です。
また、ユーザーは生活スタイルに合わせて自分の好きな動画を視聴していますので、自分とは関連性の低い広告を好まない傾向があります。そこで、ユーザーの性別や年齢などの属性、そして興味関心などの特性に合わせたターゲティングオプションをご用意しています。また、広告Aを見たユーザーに広告Bをお届けするなど、定義した順序で一連の動画をユーザーに表示する動画広告シーケンスという手法もあります。広告主様には、オーディエンスに合わせた最適な広告フォーマット、ターゲットオプションの選択、そしてクリエイティブの検討をお願いしています。
さらに、モバイルやPC、コネクテットテレビなど、視聴環境も様々です。皆様もぜひご自身のYouTube視聴シーンをイメージしていただきたいのですが、外出中や自宅のソファ、ベッドでのモバイル、デスクなどのPC、そしてリビングルームのコネクテットテレビ。それぞれ、見ている時の視聴環境も態度も様々です。
そこで弊社では、これまでに様々なデバイスで配信された広告の効果を分析したABCDフレームワークを公開しています。ABCDは以下4つの要素の頭文字で構成されています。すべてを含めなければいけないことではないですが、現時点ではデバイス間で大きな違いは見られず、各デバイスに共通した効果的なフレームワークだと考えております。ぜひ、目的に応じてご参考にしていただけますと幸いです。
- Attention:没入型のストーリーで注目を集め、視聴者の関心を引き込む
- Branding:早い段階で、頻繁に、そして十分にブランドを認知してもらう
- Connection:ブランドストーリーと視聴者の感情を結びつける
- Direction:ブランドが望むアクションを視聴者に対して明確に提示して行動を促す
――各端末の先にいるユーザーへ適した広告を届ける観点では、御社ではどのような対応をされていますか?
中村:弊社では、ユーザーに適したターゲティングオプションの提供以外にも、広告の挿入タイミングや表示回数について、様々なテストを行なっています。その結果を分析しながら、ユーザーにとって最適で、かつ広告主様にとっては広告効果を提供できるように、常に改善を行なっております。
また、ミッドロール広告と呼ばれる動画の途中で挿入される広告の種類や挿入場所は、動画投稿者が自分で決定することができます。具体的には、台詞や動作の途中など、動画の視聴の妨げになるような位置にミッドロール広告を配置しないよう、手動で挿入点を決めることができます。これにより、クリエイターにとっては広告収益を得ながら、なるべく動画の途中離脱を避けることが可能となり、結果として広告をしっかりと見ていただくことができると考えています。
