単身世帯増加のインパクト
国立社会保障・人口問題研究所が公表した直近の将来推計によれば、2025年の単身世帯(一人暮らし)は、2015年より8.4%増えて1996万世帯になると見られている(2015年基準推計)。ここで着目したいのは70歳以上の増加と「これからシニア」である50代の増加である。
単身世帯の増加については人口要因が大きいが、他の要因として、子どもとの同居率の低下がある。ボリュームによるインパクトで見ると団塊の世代の「おひとり様」が増えていくので特に着目すべきである。もう一つの要因として、生涯未婚率の上昇がある。こちらも上昇傾向にあるが、団塊の世代の子どもたちである50代の増加はボリュームとして大きく見過ごすわけにいかない。

今まで「おひとり様」を視野に入れたモノづくりやサービスづくりは手薄だったような気がしている。暮らし方を含め今一度探求し、ニーズを探るべきである。
「健康価値」の変容
「生涯現役」という視点から、シニアの「健康価値」について、二つの視点から考えてみたい。
一つは完全リタイア後から健康寿命を経て、「80歳の壁」を超えてもなお、介護を受けずにアクティブに暮らす人たちの「健康観」である。先ほどの4分類に語られている「ディフェンシブシニア」と「ギャップシニア」の存在である。
私たちは「健康寿命」という言葉のイメージから、この層について「心身ともに衰え、健康に不安を抱えているはず」と決めつけてはいないだろうか。確かに「加齢」という面では、健康に大きく影響しているだろう。しかしこれはこの層に限ったことではなく、50を過ぎれば老眼だったり関節の痛みだったりが出てくるだろうし、60を過ぎれば特に男性は高血圧が大きな問題になってくる。とすると、この層はそれを受け入れながら生活している、いわば「加齢」のプロなのではないだろうか。
たとえば食生活を見てみると、食卓に並ぶメニューは、季節感を取り入れ意識せずともバランスを考えたものでとても豊かである。「栄養は足りていますか?」と聞くと「足りていないかも」と答えるが、若い人たちよりも十分であることがわかる。ただそう遠くない将来にゴールを迎えることは想像できているので、その観点で「あと何年健康でいられるか」は大きなテーマで健康観に大きく寄与するだろう。現在ボリュームが大きいというだけでなく、「人生100年時代」において重要なマーケットであるので注視したい。
もう一つは「これからシニア」についてである。私たちは今、健康について「身体の健康」と「ココロの健康」の両面で考えるようになった。さらには「働き続けること」は大きなテーマであり、社会システムの変化、さらには変化する地球環境にも考えを及ばせる必要がある。つまりもっと大きな意味での「ウェルビーイング」という「健康」ということになる。「これからシニア」については、今までの「健康」のままでモノやサービスを考えるべきではなく、新たな価値を紐解く必要がある。