莫大な顧客データの活用で「広告×販促」を実現
加えて(3)のデータ活用に関しては、さらなる強化を進めている。広告視聴率に加えてリピート率・売り上げの貢献率・LTV・ロイヤルカスタマー化など、企業の悩みに沿った配信やレコーディングをすることによって、購買まで直結するフィードバックを目指す。
「我々が目指すのは、広告と販促の掛け合わせです。認知・関心・検討・購買までを一気通貫で担えるように進めています。元々の小売事業と広告事業を上手く融合しながら、セブン-イレブン・ジャパンが中心となって実現していきたいです」と杉浦氏は意気込みを語った。
同講演ではこれまでに行った効果実証実験についても触れ、実際の定量データを用いてリテールメディアの有用性を解説した。たとえば、自社商品「ななチキ レッド」を販売した際に行った実証実験では、約30万人を対象に条件ごとの購入率を調査した。
すると、購買につながった割合について「ターゲティング+新規広告展開」をした場合は何もしなかった場合と比べ約5.1倍、「ターゲティング+新規広告展開+クーポン配布」は約8.6倍高い結果に。ターゲティングした広告展開とクーポンによる販促を組み合わせた施策が最も購買につながりやすいことがわかった。
「自社商品で、リテールメディアが確かな購買効果をもたらすことが確認できたので、他のメーカー様にもメディアとして自信をもって提供ができています」(杉浦氏)
他にも、店舗の常連会員を抽出し無駄なく広告配信する形のターゲティングや、購買行動から購入層をペルソナ化しての流入分析など、データを活用した挑戦を続けている。
50周年を迎えるセブン-イレブン・ジャパンがこだわる、リテールメディアの在り方
リテールメディアの価値最大化を目指した結果、2022年の1年間で数々の広告出稿や販促を実現。「その多くが、データ分析による、より良い顧客とのコミュニケーション設計のために活用いただけた」と振り返る。
リテールメディアを事業として進めるうえでは、一過性のCPM(インプレッション単価)を追うのではなく、長い目で顧客の動向を見る必要があるという。杉浦氏は「LTVを明確化することにこだわり、事業を深めていきたい」と語った。

最後に、各企業と連携を深めて日本のリテール市場を盛り上げたいと意気込みを述べて、講演を締めくくった。
「今年でセブン-イレブン・ジャパンは50周年の節目を迎えます。我々だけの利益を求めるのではなく、お客様や地域社会およびお取引先、フランチャイズチェーン加盟店、それぞれの価値向上を実現できるリテールメディアを目指していきたいです。日本において、リテールメディアのまだ市場は小さいと思っています。皆さんと連携しながら、取り組みを進めていきたいです」(杉浦氏)
