ユーザーの体験を形作る「瞬間UX」「習慣UX」とは?
ここからは、行動中心設計の全体像を紹介していきます。人間の行動に着目したとき、行動は大きく2つの行動に分類されます。1つ目は、「複数の選択肢がある中で階段を選択する」といった、1回の行動選択にフォーカスした瞬間的な行動(瞬間UX)です。もう1つは、「毎日通勤の際は階段を選択する」といった継続的に1つの行動をし続ける習慣的な行動(習慣UX)です。
瞬間UXが繰り返されることで、習慣UXが生まれます。習慣UXを様々なシーンで実現できれば、それはすなわち「体験全体を創る」ことに他なりません。
したがって、いきなり体験全体を捉えようとするのではなく、まずは特定の行動に対して具体的な瞬間UXを創ること。そして瞬間UXを継続的に続ける習慣UXを創り、様々なシーンで適用していくことで、体験全体が創出されます。これが行動中心設計の全体像です。

ついやってしまう、無意識的な瞬間UX
具体的なイメージができるところまで分解をしてみましょう。瞬間UXは、無意識的な「ついやってしまう」行動と意識的な「ついやりたくなってしまう」行動に分解できます。
たとえばエスカレーターと階段の選択肢がある中で、エスカレーターがとても混雑していたらどうしますか。エスカレーターの乗り口までかなり遠かったらどうでしょうか。皆さんは無意識に、階段を選択するのではないかと思います。これが無意識的な「ついやってしまう」行動です。
では、階段を上っている人が段差を上がるたびに音が鳴っている様子を見かけたらどうでしょう。ちょっと階段を上ってみたくなりませんか。これが意識的な「ついやりたくなってしまう」行動です。

無意識的な「ついやってしまう」行動を喚起する要素として、8つの構成要素「初期設定」「単純化/容易化」「同調」「フレーミング」「情報開示」「わかりやすさ」「リマインダー」「エラー予測」が挙げられます。