実店舗とECをマージして切れ目ない体験を提供
磯山(wevnal):次にタカミのCX改善施策について、教えてください。
佐藤(タカミ):タカミとお客様の主な接点はECですが、実は2019年12月に「TAKAMI GINZA」という体験型コンセプトショップもオープンさせました。ここでは製品を実際にお試しいただけるだけでなく、「タカミアドバイザー」という美容部員が正しいスキンケアの方法をコーチングします。お客様はご自身のお肌の状態を見ながら、日頃のお手入れを見直すことができるのです。

佐藤(タカミ):コーチング以外にも、習慣化のために自宅に郵送される定期便の製品をお客様が銀座に寄ったついでに受け取ったり、定期便サービスの変更手続きをTAKAMI GINZAで行えたりします。このように「実店舗でのコーチングと定期便サービス」を切れ目ない体験として提供することで、お客様の正しいスキンケアの習慣化をサポートしているのです。その結果として、来店されたお客様はLTVが高い傾向にあります。

磯山(wevnal):タカミではECのみならず実店舗での体験もマージして設計することで、定期便の契約件数の増加のみならずLTVの向上にもつなげているわけですね。
顧客を自分に“憑依”させる
磯山(wevnal):では次に、ECサイトの運営や実店舗と絡めた体験設計などにおいて意識していることをお二人に聞いていきたいと思います。
谷口(スペシャライズド):データばかりに目を向けず、感覚的なところも大事にすることです。たとえば、テレビCMの売上への貢献度は、Web広告ほど正確には測れません。であれば、ある程度割り切って考えることも肝要です。「テレビCMの放映が開始した直後に、サイトへの訪問数がこれだけ伸びたのであれば、『成果があった』と判断してCMの放映を継続しよう」という具合に。基本はデータが判断軸ではありますが、時には自身の感覚に委ねてみる。「数字」と「感覚」のバランスを取るように気をつけています。
佐藤(タカミ):私の場合はむしろ、施策の企画段階では数字よりも感覚を大事にしています。私はよく「お客様を自分に憑依させる」という言葉を使うのですが、たとえばメールの文章を作成する際、お客様の立場で「この表現をどのように感じるだろうか」と突き詰めて考えるのです。最初から数字ばかりを追い求めるのではなく、施策検討の段階においては感覚を優先させることを私はお勧めします。