勝負の分かれ目となる変革の芽に気付けるか
有園:先ほどのお話にあったように、DACはポストCookie時代を見据えたソリューションやサービスを早くから提供しています。しかし、サードパーティCookieはまだ使えるため、ID技術などを活用した広告配信はそれほど業界内で盛り上がっていないようにも感じています。
田中:今は「まだ早い」という姿勢の企業が多いのが現状です。たとえば、CDPは導入コストが大きいため、まだ大企業しか導入できていません。一方、GA4はコストも不要ですし、導入する企業はとても増えていますね。データクリーンルームの引き合いも強いです。
有園:業界全体として、今までと同じではいられなくなると思っています。私はこれまでの経験から、「0.1%の変化が、やがて大きな違いになる」のだと感じています。たとえば、2004年ごろ「インターネット広告はいずれテレビを超える」と広告関係者に話したところ、「何を言っているんだ」と笑われました。でも実際に超えましたよね。スマートフォンの普及についても同じです。当初は日本でここまで普及すると思われていませんでした。しかし、どちらも当初から少しずつ伸びていたのです。ゆくゆくは大きなパラダイムシフトにつながる変革の芽に早期から気付けるか。
サードパーティCookieの廃止はもう決まっていますので、代替する技術やソリューションは必ず伸びていきます。これからはファーストパーティデータをしっかりもって、ちょっとした違いでレバレッジを効かせられるかが勝負の分かれ目になるのではないでしょうか。CDPについても、コストは大きいかもしれないですが、転換期である今のタイミングで導入すれば、将来的に大きな違いになる可能性は十分にあります。
「協調領域」と「競争領域」が鍵
有園:DACはこの問題に対して、どのような戦略をもって対応してきたのでしょうか。
田中:デジタルは常に進化しています。新しい技術やサービスが上昇気流に乗ったときにビジネスを始めるようでは、もう遅いのです。最初からやっていないとプロにはなれません。そういうチャンスがあるものには積極的に手を出していく方針ですね。
データに関しては、間違いなく重要になる分野です。この分野に関してはほぼ全方位でアタックしてきましたね。「とにかくデータに強い会社になろう」と取り組んできました。
有園:ポストCookie時代に向けた取り組みは、業界全体を巻き込んでいく必要があると考えています。DACにはぜひそういった姿勢を打ち出してもらいたいです。
田中:「協調領域」と「競争領域」を切り分けて取り組んでいくことが重要だと思います。データ基盤の開発や提供においては協調し、利用する独自データやコンテンツなど、基盤に載せるものについては競争の領域です。電通グループや博報堂DYグループ、サイバーエージェントなどが協調して基盤を使えば、みんな使い始めます。大きな波を業界全体で起こさないといけません。
ただ、協調できる領域と競争になる領域を見極めるのは難しい面もあり、緻密に考えないといけません。たとえば、メディア側のCMPは協調しやすいですが、CDPの構築については独自データの取り扱いの面で競争の要素が大きいですね。
有園:IDやCMPについては、業界で推奨するサービスを指定するなど、協調できますよね。
