外出機会が大幅増、再注目を集めるオフライン広告
2022年は、新型コロナウイルスの流行も落ち着きを見せ、外出機会が大幅に増えた年となりました。電通グループが発表した「世界の広告費成長率予測」によると、2023年は前年に引き続き、世界すべての地域で広告費はプラス成長となる見通しになっています。守りから攻めの姿勢で広告展開を行う企業も多くなる見込みです。
特に成長が著しいのはインターネット広告ですが、オフライン広告の出稿量も多くなってきています。
私は、日々SNS上で話題になったオフライン広告を現地に見に行って写真を撮り、「なぜ話題になったのか」を考察しています。そんな私が広告巡礼で主要駅を回っている際もOOHの出稿率が上がっており、枠の埋まり具合が主要媒体を中心に上がっている実感もあります。
今回は、2022年(2022年1月~2022年12月)に私が撮影してきた広告写真の中から、話題化した事例、おもしろいと思った事例をピックアップ。それぞれの特徴や傾向について解説していきます。
毎日発行される新聞の特徴を活かした、日に日に小さくなる広告
一つ目は「斬新な演出」で話題を獲得した広告です。
2022年6月に三日間にわたって展開された、大日本除虫菊(KINCHO)の浴室用防カビ剤「お風呂の防カビムエンダー」の新聞広告が事例として挙がります。
同広告はまず初日に新聞の全面広告(15段広告)を掲出。商品写真とロゴが入っており、左上には「お風呂の防カビムエンダーを知ってもらうだけのために、こんな全面広告する必要あるんか。三分の一くらいのスペースでええんとちゃうか」「明日、やってみます」とメッセージが入っていました。
翌日は前日より小さくなって登場し、左上には、「……もっと小さくてもええんとちゃうかもっと小さくてもええんとちゃうか」「明日、やってみます」とやり取りがあり、最終三日目には大幅に小さくなって登場。「いくらなんでも小さすぎる でっかくしてくれ」と書いており、結局どっち⁉と思わずツッコミをしたくなる締めくくりに。
これは、毎日発行される新聞だからこそできる演出でした。初日の全面広告で注目を集め、「明日、やってみます」の意味深メッセージで、翌日以降も“広告を探したい”と読者に思わせる仕掛けは見事だと思います。
肝心の「ムエンダ―」自体の説明はデザイン内にほぼありません。しかし、「お風呂の防カビムエンダー」というフレーズを三日連続で見てもらえる状況を作れるため、結果として認知度UPにつなげていたように思います。
他にも斬新な演出といえば、7月に新宿駅で掲載された「すみだ水族館」の広告も事例として挙がります。
同広告が展開されたのは、新宿駅スーパープレミアムという広告枠。ここでは比較的自由度の高い演出を数多く見ることができます。
通常では、B0サイズ20枚相当の広告がポスター貼りされるのですが、今回はなんと立て看板が設置されました。どこか懐かしさを感じるデザインには、実際に水族館のスタッフが描いたものも採用されたと言います。
SNSを検索してみると「懐かしい」といった旨を投稿するユーザーが散見されました。広告をあえて立て看板式にすることでリアリティーが増し、一気に宣伝感が無くなったようにも思えます。どこか親しみが持てる広告でした。