老若男女に愛され続ける理由は
ミスタードーナツの商品企画、プロモーションにおいては、“ドーナツ専門店ならではのおいしさ”“選ぶ楽しさ”を追求し、新規性を訴求することに重きが置かれている。市場調査やトレンドの研究、自社商品の定量的な調査分析があるのは言わずもがな、消費者のニーズ探索においては、一人の顧客を捉えるような地道な取り組みも行われている。
特筆すべきは、代表取締役会長の山村輝治氏が自ら足を運び、全国各地の顧客に会いに行く「ミスドファンミーティング」の試みだ。コロナ禍など開催が難しい時期を除き、およそ2ヵ月に1回のペースで、オフラインのファンミーティングを開催してきた。
ここでは、ミスタードーナツの歴史や新商品、キャンペーンの情報を紹介するとともに、参加者から自由な意見を挙げてもらう意見交換会も実施。近年高まっている健康志向や多様化している食の嗜好、ライフスタイルに対応したシリーズ「からだににじゅうまる」は、ファンミーティングで顧客から挙げられた声をもとに開発されたものだという。

また、顧客の声を大事にする姿勢から思い出される施策として、創業50周年を迎えた2020年に実施したキャンペーン「ミスドの思いド」も印象的だった。ミスタードーナツにまつわる様々な思い出を募集した同キャンペーンでは、約1万4,000件の応募があった。老若男女を対象にするプロモーションは企画も設計も簡単ではないが、「お客様との信頼関係があったからこその50年であることを再確認できた」という巖氏の言葉どおり、ミスタードーナツが築いてきた顧客基盤が見えたキャンペーンとも言える。
50年以上、数々の“転換”を越えてきたミスタードーナツからも、商機のつかみ方、作り方に関して学べることがあるのではないだろうか。