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【特集】進むAI活用、その影響とは?

生成AIがクリエイティブとデータをつなぎ、顧客体験を変えていく。アドビに聞くビジョンと現在地

クリエイティブの依頼から配信、分析までのプロセス化が鍵

──実際に、生成AI活用において重要なポイントとして挙げられた、「マーケティングプロセスの標準化・記録・評価」までを、御社のソリューションで実践している企業はありますか?

澤田:プルデンシャル・ファイナンシャル様の事例を交えて紹介します。同社は、「クリエイティブプロセスの混沌」と「リソース不足」という2つの課題を抱えていました。

 全世界共通で1つのクリエイティブチームがクリエイティブ制作を担っているのですが、その依頼プロセスがメールやチャットなどバラバラだったのです。そこで、制作依頼から実際に配信して分析するまでの流れを整理。Adobe Workfrontを活用し、制作に必要な情報から配信後の結果まですべて1つのプロジェクト管理ツールの中に記録するプロセスを作り上げました。

アドビ株式会社 デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング部 ソリューションコンサルタント 澤田 慶子(さわだ・けいこ)氏 米国系大手ソフトウェアベンダーにて、公共セクター、パートナービジネスに従事。アドビ入社後は、マーケティングオートメーション、現在はコンテンツサプライチェーンにかかわるCMSやDAM、マーケティング作業管理アプリケーションを担当。
アドビ株式会社 デジタルエクスペリエンス事業本部
ソリューションコンサルティング部 ソリューションコンサルタント
澤田 慶子(さわだ・けいこ)氏

米国系大手ソフトウェアベンダーにて、公共セクター、パートナービジネスに従事。アドビ入社後は、マーケティングオートメーション、現在はコンテンツサプライチェーンにかかわるCMSやDAM、マーケティング作業管理アプリケーションを担当。

 このとき、デザイナーはCreative Cloud上で自分に依頼が来ているタスクを確認できるようになっており、作業の進捗も自動で記録されます。

 また、リソース不足の問題は、依頼内容を紐解くと既存のクリエイティブの一部を差し替える作業や、簡単な変更作業が多く含まれていることがわかりました。そこで、企業のポリシーに沿って画像やロゴを編集できる環境をAdobe Express上に用意。簡単な作業は依頼元のマーケティング担当者が行えるように整えました。

 制作されたクリエイティブは、レビューのプロセスを経て、最終的に、「Adobe Experience Manager Assets」と呼ばれるDAM(デジタルアセット管理)システムに保管されます。簡単な変更の場合、クリエイティブチームはクリエイティブをレビューするだけで済むようになりました。これによってクリエイティビティの民主化が進み、クリエイティブチームはよりクリエイティブな活動に注力することができました。

 さらに、同社はクリエイティビティのDXも推進しました。先述のとおり、依頼から配信まで全プロセスをプロジェクト管理ツールで一本化した上で、配信結果を分析するツールとも連携しています。これにより、クリエイティブの中のどういった要素が評価されているのか、自動でレポートされます。Webページ単位のビューやバナー単位のクリック率だけでなく、クリエイティブの中の「カラー」や「写真」といった要素ごとの効果を分析できるような、生成AIを活用したContent Analyticsのソリューションも提供しています。

──プロセスを整理することでAI・マーケティング担当・クリエイターの作業を分けるとともに、クリエイティブ自体のポテンシャルをデータで分析できるようにしたのですね。この取り組みは具体的な成果にもつながっているのでしょうか?

澤田:プルデンシャル・ファイナンシャル様の場合、スポンサーを務めるイベントのプロジェクトでこのツールを活用しました。その結果、イベントでエンゲージした人数は前年比365%、ROIは1.24倍に増加するなど大きな成果につながっています。

 一連のプロセスが1つのシステムで通貫して記録されるので、振り返りも容易です。翌年は何に注力して、何の作業を省くべきかを判断し、メンバーが最適な仕事に集中することが可能になりました。

 新たに生成AIを組み込んだマーケティングプロセスを実践する際は、まずこういった特定のプロジェクトで導入するなど、小さく始めることもポイントだと思います。

──生成AIが組み込まれ進化するツールを活用するために、マーケターが変えるべきマインドはあるのでしょうか?

阿部:アジャイルなアプローチ」が鍵になると考えています。今は、リアルタイムに様々なテストを実行し、最適解を求めてサイクルを回すことが簡単にできる時代です。そこで重要になるのは、データを基に効果を分析し、次のアクションにつなげるアジャイル的なマーケティング手法です。

 これからのマーケティングプロセスはすべてレコーディングし、生成AIを含めたテクノロジーによって分析し、最適化・効率化していくことになるでしょう。そのためには、部門を横断してデータを記録すること、そしてデータに基づいた意思決定の文化が今以上に必要になるはずです。

 昨今、社内に分散する顧客接点は、顧客データベースを作って管理し、データを基に判断することが当たり前になっています。しかし、クリエイティブに関しては「このデザイナーが言うなら間違いない」といった感覚的な議論で決まることが多く、まだまだDXと縁遠い領域だと個人的には思います。

 そうではなく、記録されたデータに基づいてクリエイティブを含めた顧客体験を捉えていくことが、生成AI時代のマーケターには求められます。これからは、クリエイティブの領域に関してもこういったデータに基づいた考え方が浸透していくと期待しています。

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この記事の著者

岡田 果子(オカダ カコ)

IT系編集者、ライター。趣味・実用書の編集を経てWebメディアへ。その後キャリアインタビューなどのライティング業務を開始。執筆可能ジャンルは、開発手法・組織、プロダクト作り、教育ICT、その他ビジネス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/26 09:30 https://markezine.jp/article/detail/42898

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