「安ければ良い」から進む意識に企業ができること
──りそなホールディングスさんは融資や投資の点から企業のサステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)を支援しているというお話がありましたが、融資や投資においてSDGsやESGを組み込むことで、市場のなかでエシカルや環境に対する意識が高まるという期待もあるのでしょうか。
同サステナビリティ推進室 吉本圭吾さん
北條:はい、そう思います。エシカル消費というワードは欧州に比べるとあまり普及していないのですが、そうした消費者意識が浸透しないと、企業側が「収益につながらないから環境対策を止めよう」となってしまうリスクが高くなります。
いくら企業が環境に良い素材や環境を使おうとしても、その分のコストをかぶってしまうようであれば、収益は目減りしてしまいます。できればそこは最終消費者に理解していただき、高くても環境や社会に良いモノを買ってもらえるような消費者意識が根付けば、企業の取り組みも進みやすくなると考えています。
吉本:これまでの世界は、モノを大量に作ることでコストを下げ、経済が発展していきました。ところが人口が増え過ぎてみんなが豊かさを求めるようになると、大量生産・大量消費では地球がもたなくなってしまいます。加えて社会格差が拡大し、豊かな人に富が集中する一方、貧困の連鎖から抜け出せない人が増えるという社会問題も起きています。
このように、これまでの経済発展のあり方そのものが大きな問題を引き起こしているなか、皆が豊かさについて改めて考え、商品の成り立ちやビジネスモデルを変えていかないと本当に引き返せなくなると思うんです。それにはやはり、企業も変化しなければなりませんし、消費者側もエシカル消費という観点で「安ければ良い」という価値観を変えなくてはなりません。この両輪を回すためにもエシカル消費は大切な要素だと考えています。
Z世代のリアルな消費行動 エシカル消費促進の糸口
──Z世代の皆さんもお気付きかもしれませんが、世の中には「人件費も出ていないのではないか」というような、本当に低価格な製品が沢山あります。それはどこかの誰かの犠牲があって初めて成り立つ価格かもしれません。その一方で、学生さんのようにあまりお金に余裕がないと、安いという価値でそれらの製品を購入している人も多いでしょう。日野原さんは人権問題にも関心があると思いますが、その点はいかがですか。
日野原:低価格の通販型ファストファッションは大学でも流行っています。環境問題に関心がある学生でも「ファッションと脱炭素」を結び付けて考える人は少ないですし、やはり自分の財布の中身と相談して「安い服を買っちゃおう」となるケースは多いと思います。買い物習慣が付く前の段階からエシカル消費が浸透すれば、私たちの世代でも「安さ」だけで商品を購入することは少なくなるのではないでしょうか。
──そうですね、難しいところですね。食材や食費についてはいかがでしょう。一人暮らしのご経験がある方は?
高橋:学生時代は6年間自炊をしていましたが、高い食材をあえて買うことはなかったです。やはり安さが一番でした。でも、新鮮であれば少し高くても買ったりしていましたね。あとはコーヒーが好きなので、自分でコーヒーを挽いて作ることもあるのですが、そういう自分の好きなモノや嗜好品には少しお金をかけていました。そういうこだわりから入るとエシカルにもつながりやすいかもしれません。
