子どもにもメッセージが届きやすいYouTube
――今回、X(旧Twitter)とYouTubeを活用されましたが、動画の再生数・視聴数およびフォロワー数をKPIにされた背景や、その実現のための戦略について教えてください。
2019年度から戦略的にSNSを活用し、いざという時に日赤が正しい情報や役に立つ情報をお伝えして身を守っていただけるよう、常に皆さんとつながれる状況を作る取り組みを始めました。そのためX(旧Twitter)のフォロワー増加を目標の1つにしました。今では30万超もの方にフォローをいただいています。
YouTubeで出稿した理由は、老若男女に強く、子どもにもメッセージが届きやすい媒体だからです。先ほどお伝えしたように、子どもから親世代への気づきにつなげるべく、YouTube広告で動画を配信しました。
――スキップもできるYouTube広告で長尺の動画を見せるために、どのような工夫をされましたか?
本キャンペーンが始まる前に15秒の予告編をSNSで投稿しました。予告編を通して「このあと何が起こるんだろう」という期待感を持っていただき、本編で全部見てみようと思っていただく流れを作ることはできたのかなと思います。また、家具たちが途中まで「大地震」のことを「アイツ」と表現することで、動画を見ている人に興味を抱きつづけさせるような工夫もあり、制作に携わってくださった方々のアイデアが詰まった作品となりました。
丁寧な表現で総再生数約1,148万を記録
――取り組みの結果を伺えればと思います。定量的な成果に加え、当初予想していた反応と比較した際の反応があれば教えてください。
KPIは、2020 年コロナ禍動画のオーガニック再生数を参考に、YouTube、Xからの長尺動画の再生数・視聴数を目標にしました。当初は240万再生を目標値にしていたのですが、結果的にはYouTubeだけで900万再生・完視聴363万超。Xでは238万再生・13,000 完視聴と、73,000 リツイート・26,000いいねを記録しました。
KPIはもちろん、過去の動画再生数を大きく上回りましたし、3分の尺にもかかわらず、「家族で視聴した」「子どもが食い入るように見ていた」「視聴後家族で対策を話し合った」「他の動画ならスキップしちゃうのに、この動画は最後まで見た」などのコメントが寄せられました。
想像したよりも多くの方にリーチすることができ、完全視聴率も非常に高かった理由は、クリエイターさんが1つひとつテーマを噛み砕きながら、丁寧に、生活者にわかりやすく受け入れてもらいやすいコンテンツとして昇華してくれた結果だと感じます。
クリエイティブはミッションやスローガンを大前提に
――戦略を立て、クリエイティブを用意し、施策を実施するまでには様々な企業、関係者のアイデアが加わると思います。本来目的からブレずに、実施するためにマーケターが意識すべきこと、軸として持つべきことは何だとお考えですか?
ブレない部分を認識して、伝えるべきことを明確し、丁寧に伝えることでしょうか。社のパーパス、私たちの場合であれば「人のいのちを守る」という使命、「人間を救うのは、人間だ」というコーポレートスローガンのもとに日赤の活動があります。
今回の「おうちの中のモンスター」は、丁寧な表現を意識したので「これはバズらないんじゃない?」という意見もありました。もちろん記憶に残らないと意味がないので、クリエイターとしてはインパクトのある表現を加えたいと思うのは自然です。実際に、最初のコンテでは、もう少し過激な表現もありました。
しかし、その過激な表現は日赤のイメージには合わないと考えました。日赤が今まで積み重ねてきた信頼をしっかりと守りながら丁寧に伝え、命を守ることにつなげる必要がある。だからこそ、過激な表現は可能な限り取り除いて、受け取りやすい表現に変えています。そういった工夫がイラスト・セリフ・音楽にマッチして、多くの方に見ていただけたと思います。