SEOは本当に“死んだ”のか?
月岡氏によると、デジタル集客チャネルには「デジタル広告」「SNS」「SEO」の三つに大別されるとのこと。ただし、デジタル広告については「Cookie規制の流れで、見込み顧客へのリーチが難しくなった側面がある」と指摘。SNSもユーザーの感情に左右される面が大きいため、「オーガニックでフォロワーやファンを増やすのは容易ではない」と月岡氏。
「そのような中でも、SEOはある程度ロジカルに集客につなげることができるチャネルの一つです。しかし、毎度のことですが、また最近も“SEO is DEAD(SEOは死んだ)”と言われたりしています」(月岡氏)
なぜ“SEO is DEAD”と言われているのか。その理由は生成AIの登場にある。ChatGPTの登場後、生成AIツールが相次ぎ開発された。たとえば、マイクロソフトは「Bing Chat」を、Googleも「Google Bard」という生成AIを発表している。そして、こうした生成AIを検索エンジンに組み込んだSGE(※1)もリリースされた。
※1 Search Generative Experience(生成AIによる検索体験)。AIによる生成結果をGoogle検索エンジンのクエリ応答に統合した検索機能とインターフェース機能のこと
SGEではどのような検索結果が得られるのか。月岡氏が試しに「新しい言語を学ぶのに最適な年齢は?」と検索してみたところ、生成AIが生成した要約文が検索結果のトップに表示され、右カラムなどに要約文作成の際に参考にしたサイトが表示された。
「日本版で検証して感じたのは、検索結果画面はこれまでとあまり変わりなく、パッと見ると『強調スニペット(※2)』のようでした。また、検索エンジンとAIは自らコンテンツを制作しているのではなく、結局、誰かが作ったコンテンツを要約しているようなものです。つまり『企業は今後もコンテンツ制作やSEO対策には取り組まなければならない』というのが、現在の私の見立てです」(月岡氏)
※2 検索結果としてページリンクが一覧で表示される前に、そのページの抜粋文が示されることがある。その文章を強調スニペット(抜粋)と呼ぶ
AI任せでは、ユーザーに信頼してもらえない
企業は引き続きコンテンツ制作やSEO対策を行う必要があり、生成AIをコンテンツ制作に活かさない手はない。しかし、AIが作成したコンテンツは、Googleやユーザーから評価してもらえるのだろうか。
まず、Googleが生成AIによるコンテンツ制作に関するガイドラインを発表している点に触れ、その内容として「生成AIによる作成であれ、人による作成であれ、評価は変わらない」とのこと。ただし、検索順位操作を目的とする、スパムポリシーに違反する自動生成コンテンツは認められないという。
続いて、月岡氏は海外カンファレンスで紹介された「生成AIが作成したコンテンツに対するユーザー評価に関する調査結果」を披露。「生成AIで作成したコンテンツ」と「専門家が書いたコンテンツ」のユーザー評価を調べたところ、「エンゲージメントスコア」と「知識有無の判断」には大きな違いは見られなかった。しかし、「信頼度スコア」においては、生成AIが作成したコンテンツが49%なのに対し、専門家によるものは64%と、明確な差が現れた。このことから、月岡氏は「AIに頼りきると、ユーザーから信頼してもらえない可能性がある」と指摘する。
さらに、月岡氏はあるユーザーが行ったテストの結果を紹介する。このテストでは、生成AIによって作成されたコンテンツを約1万ページ公開し、流入数の変動を観察。結果として、公開から1ヵ月後は流入数も順調に推移していたが、数ヵ月後には急激に減少した。このデータから、月岡氏は「生成AI任せでは信頼獲得も流入維持も難しく、効果的なSEO対策とはいえない」と持論を展開した。
つまり、生成AIに頼り切るのではなく、生成AIを活用して効率良く、良質なコンテンツを作ればよいのだ。そのためのTipsとして、月岡氏はChatGPTを活用したコンテンツ制作の3ステップを紹介する。