生成AI時代、拡大するコンテンツの影響力
2022~2023年に最も話題に上ったテーマの一つが「生成AI」だろう。まず、クリエイティブイメージを文章で説明すると、それに基づいてイラストを生成してくれる「Midjourney」が誕生。さらに、2022年11月30日にはOpenAIが「ChatGPT」のプロトタイプを公開したところ、世界中から大きな反響があり、日本国内でも一躍、話題に。今でもホットなテーマだろう。
そんな生成AIをテーマに「ジェネレーティブAIでSEOは必要なくなるのか?」というタイトルの講演を行ったのが、Faber Company 執行役員の月岡氏だ。
同社は、SEO対策・コンテンツマーケティング支援ツール「ミエルカSEO」をはじめ、ユーザー行動分析ツール「ミエルカヒートマップ」やローカルSEOツール「ローカルミエルカ」などのツールと、フリーランスのマーケターと企業をマッチングする「ミエルカコネクト」などのリソースの両面から、企業のデジタルマーケティング支援を行っている。
月岡氏はまず、コロナ禍以前から現在までのデジタルマーケティングの潮流として「コンテンツの影響力が一層大きくなっている」と語る。
良質なコンテンツがより求められる時代に
「コンテンツの影響力が大きくなっている」とはどういうことか。月岡氏によると、BtoC商材であれば、消費者による商品・サービスの口コミ、いわゆるUGCが他者の購買に大きな影響をもたらすようになった。BtoB商材でも、自社の課題解決につながる情報やコンテンツはSlackなどのダークソーシャルとも呼ばれる社内コミュニケーションツール内で積極的に共有・拡散され、購買の重要な判断材料になっているという。
「ニーズを的確に捉えたコンテンツであれば、様々な形で共有され、それがtoC/toBを問わずあらゆる購買の意思決定に与える影響が大きくなったのです」(月岡氏)
つまり、今企業にとって必要なものの一つが「良質なコンテンツ」ということだ。
さらに、月岡氏は「良質なコンテンツや企画は複数チャネルに展開できる」と語る。たとえば、一度記事コンテンツを作成してしまえば、メルマガのネタにもなるし、動画にして自社のYouTubeチャンネルで配信することもできる。逆も然りで、動画コンテンツを文章化して記事にしても良いし、いくつかのコンテンツをまとめてeBookやホワイトペーパーなど、リード獲得のための特典にしてもよいのだ。
そうしたコンテンツをベースとした集客チャネルの一つに、本稿のメインテーマである「SEO」がある。
SEOは本当に“死んだ”のか?
月岡氏によると、デジタル集客チャネルには「デジタル広告」「SNS」「SEO」の三つに大別されるとのこと。ただし、デジタル広告については「Cookie規制の流れで、見込み顧客へのリーチが難しくなった側面がある」と指摘。SNSもユーザーの感情に左右される面が大きいため、「オーガニックでフォロワーやファンを増やすのは容易ではない」と月岡氏。
「そのような中でも、SEOはある程度ロジカルに集客につなげることができるチャネルの一つです。しかし、毎度のことですが、また最近も“SEO is DEAD(SEOは死んだ)”と言われたりしています」(月岡氏)
なぜ“SEO is DEAD”と言われているのか。その理由は生成AIの登場にある。ChatGPTの登場後、生成AIツールが相次ぎ開発された。たとえば、マイクロソフトは「Bing Chat」を、Googleも「Google Bard」という生成AIを発表している。そして、こうした生成AIを検索エンジンに組み込んだSGE(※1)もリリースされた。
※1 Search Generative Experience(生成AIによる検索体験)。AIによる生成結果をGoogle検索エンジンのクエリ応答に統合した検索機能とインターフェース機能のこと
SGEではどのような検索結果が得られるのか。月岡氏が試しに「新しい言語を学ぶのに最適な年齢は?」と検索してみたところ、生成AIが生成した要約文が検索結果のトップに表示され、右カラムなどに要約文作成の際に参考にしたサイトが表示された。
「日本版で検証して感じたのは、検索結果画面はこれまでとあまり変わりなく、パッと見ると『強調スニペット(※2)』のようでした。また、検索エンジンとAIは自らコンテンツを制作しているのではなく、結局、誰かが作ったコンテンツを要約しているようなものです。つまり『企業は今後もコンテンツ制作やSEO対策には取り組まなければならない』というのが、現在の私の見立てです」(月岡氏)
※2 検索結果としてページリンクが一覧で表示される前に、そのページの抜粋文が示されることがある。その文章を強調スニペット(抜粋)と呼ぶ
AI任せでは、ユーザーに信頼してもらえない
企業は引き続きコンテンツ制作やSEO対策を行う必要があり、生成AIをコンテンツ制作に活かさない手はない。しかし、AIが作成したコンテンツは、Googleやユーザーから評価してもらえるのだろうか。
まず、Googleが生成AIによるコンテンツ制作に関するガイドラインを発表している点に触れ、その内容として「生成AIによる作成であれ、人による作成であれ、評価は変わらない」とのこと。ただし、検索順位操作を目的とする、スパムポリシーに違反する自動生成コンテンツは認められないという。
続いて、月岡氏は海外カンファレンスで紹介された「生成AIが作成したコンテンツに対するユーザー評価に関する調査結果」を披露。「生成AIで作成したコンテンツ」と「専門家が書いたコンテンツ」のユーザー評価を調べたところ、「エンゲージメントスコア」と「知識有無の判断」には大きな違いは見られなかった。しかし、「信頼度スコア」においては、生成AIが作成したコンテンツが49%なのに対し、専門家によるものは64%と、明確な差が現れた。このことから、月岡氏は「AIに頼りきると、ユーザーから信頼してもらえない可能性がある」と指摘する。
さらに、月岡氏はあるユーザーが行ったテストの結果を紹介する。このテストでは、生成AIによって作成されたコンテンツを約1万ページ公開し、流入数の変動を観察。結果として、公開から1ヵ月後は流入数も順調に推移していたが、数ヵ月後には急激に減少した。このデータから、月岡氏は「生成AI任せでは信頼獲得も流入維持も難しく、効果的なSEO対策とはいえない」と持論を展開した。
つまり、生成AIに頼り切るのではなく、生成AIを活用して効率良く、良質なコンテンツを作ればよいのだ。そのためのTipsとして、月岡氏はChatGPTを活用したコンテンツ制作の3ステップを紹介する。
ChatGPTでコンテンツを制作するための3ステップ
3ステップの手始めは「下準備・リサーチ」だ。これは記事執筆前のリサーチのこと。設定した記事のテーマやターゲットとしたい読者層(ペルソナ)を決め、記事にどのような情報が必要なのかを洗い出していく。この作業にChatGPTを使うことで、リサーチ作業が一気に進むという。
ステップ2は「記事構造の作成」だ。これは記事のストーリー構成を考えるもので、具体的な作業としては、タイトルや見出し、要約作成が挙げられる。見出しや要約文の文字数、キーワードを指定してChatGPTに作成してもらうのだ。
ステップ3は「記事執筆」だ。これは実際のコンテンツ作成にあたり、文字数や入れたい情報、キーワードをプロンプトに書いてChatGPTに入力する。うまくやれば、このステップ1〜3合わせて5〜10分で完了し、コンテンツが作成できるという。
月岡氏が考案したプロンプトを活用すれば、非常に効率的に生成AIを使って記事制作を行えるというが、かといって、完成したコンテンツをそのまま公開するにはいくつか問題があるという。
たとえば、ハルシネーションの問題だ。「いかにも“それっぽく”記述されているが、真実でないことも多分に含まれていたりするので、人間によるファクトチェックは必須」と月岡氏。また、ChatGPTが学習している教師データは、やはり英語コンテンツのほうが多い。そのため「英語で質問し、回答を日本語に訳し直したほうが、精度の高い記事が作れる可能性が高いかもしれない」とアドバイスし、対応するプロンプトも紹介した。
ミエルカSEOでコンテンツを効率的にブラッシュアップ
「つまり、AIが作成したコンテンツも、公開前に人の手によってチェックやブラッシュアップが必要だ」と月岡氏。特に、SEOにも大きく影響する見出し要素は重要であり、魅力的な“フック”を作るのは生成AIだけでは困難とのこと。
さらに、重要トピックの抜け漏れチェックも欠かせないという。「生成AIが作った記事はそのテーマの肝になるような重要トピックが入っていないことが多く、読み返してその抜け漏れを防ぐ必要がある」と月岡氏は指摘する。
しかし、このようなチェック作業は手間がかかる。これらに時間を取られていては、生成AIを活用したところで本末転倒だろう。そこで、月岡氏はFaber Companyが提供するSEO対策ツール「ミエルカSEO」の活用を強く推奨する。
たとえば、見出しの調整に関しては、ミエルカSEOを使うと、検索上位のコンテンツを一覧表示して横並びで比較できる。これにより、「タイトル」や「小見出し」などの要素を、競合サイトと見比べながら、自社コンテンツを見直すことができるという。
また、重要トピックの抜け漏れチェックでも、検索上位のサイトと比較できれば手間が省けるが、そこもミエルカSEOが活きるという。ミエルカSEOでは、検索ユーザーに評価されているコンテンツからトピックを分析できる。さらに、ミエルカSEOには「コンテンツチェック」という機能があり、それを利用すると、生成AIが作った文章の中で欠けている重要トピックを自動で抽出し表示してくれる。これにより、一目で抜け漏れを確認できるというわけだ。
最後に月岡氏は、本セッションの総括として次のように語る。「生成AIの台頭により、SEOは“死ぬ”のではなく、一層難しくなることが予想される。『AIに人は駆逐されない。AIを使いこなす人によって、使えない人が駆逐される』という言葉があるが、皆さんにはぜひAIを“使いこなす側”になってもらいたい」
AIを活用したコンテンツ制作やミエルカSEOを試してみたい!
自社コンテンツや検索ニーズをミエルカSEOで分析してみたい方は、トライアル希望を受けつけています。コンテンツ制作やリライトにも活かせるので、ぜひお試しください。AIを活用したコンテンツ制作も支援しています。