ターゲティングとファンベース、両軸でアプローチを
次に、津田氏はファンへの具体的なアプローチ策として「ターゲティングアプロ―チ」と「ファンベースアプローチ」について解説。前者は、まだファンでない層を対象に広告などを通じて興味・関心を喚起する方法。後者はコアファンやファンに向けて、ブランドをより好きになってもらうことを目指したアプロ―チだ。
「新規顧客を獲得することも重要ではありますが、現在の人口減少、情報過多な時代において、ターゲティングアプローチの効果は次第に低下していきます。だからこそ、ターゲティングとファンベース、両軸で進めていくのが望ましいでしょう」(津田氏)
さらに、ファンベースアプローチを推進することで「ファンからの訴求力にも期待できる」と津田氏。ファンベースカンパニーは2022年、2万5,000人を対象にアンケート調査を実施。「信頼する情報源は?」と尋ねたところ、最多回答は「友人や親しい人(65.4%)」に。次点として「家族(60.7%)」が続いたという。
この結果の背後には「価値観の近さ」が影響していると津田氏。人は同じ価値観を共有する人から特に影響を受けやすいのだといい、実際に「ホモフィリー(※)」という学術用語もあるとのことだ。
※同じような価値観や属性を持つ人とつながろうとする人間の傾向のこと
情報があふれる昨今、
また、熱心なファンは自身が推す商品・サービスを周りに勧める際、自然と言葉に熱がこもるもの。「要するに、『
有効な「ファンへの傾聴」、その四つのポイント
津田氏は最後にファンへの傾聴の意義について言及。津田氏の考えでは、ファンと真摯に向き合い、その声に耳を傾けることがファンを増やす第一歩だという。ファンベースカンパニーでも、企業支援にあたっては、まずはクライアントのファンと直接会って、傾聴しているとのことだ。
傾聴手段として、津田氏が勧めるのが「ファンミーティング」。ファンイベントやいわゆる“オフ会”ではなく「真摯な傾聴の場」となるよう、次のポイントを押さえておくのが肝要だ、と津田氏。
1.アンケート回答を基に、少人数のファンを選定して行う(10人程度)
2.社員もいちファンとして一緒にテーブルに入り、ファン同士の会話に参加する
3.結論ありきのファシリテーションはしない。自然な会話の流れで
4.発言録をしっかり録音して後で分析。ファンが感じている価値を言語化する
「ファンミーティングは、マーケターが自らの先入観を捨てる好機でもあります。マーケターが陥りがちなのが、行動データだけを基にして解像度の低いファンのペルソナを作ってしてしまうこと。それを防ぐためにも、ファンと直接会い、彼らの感情をファン度なども活用しながら可視化することが重要です」(津田氏)
人の感情と真摯に向き合うことは、時間も手間もかかる。しかし、その結果、ファンの熱意はさらに増し、その情熱が近い価値観を持つ他者へと伝播していく。そして、ファンの輪が広がっていき、ブランドはより長く、深く愛される存在になるのだろう。