顧客と向き合い、顧客のインサイトを発見する
乙幡:実際にこれらのブランドリニューアルを実施する上で担当者としてどんなことに苦労されましたか。
山腰:大きく三つありました。一つ目が、コンセプトの再定義です。
爽健美茶は「複数素材をブレンドした、体にやさしいお茶」が最大の価値です。しかし、これらの機能的な良さは、そもそもイメージが希薄な人にとっては手に取るきっかけにはなりません。
そのため、コンセプトの再定義に向けて、お客様の声を聞き、ターゲットが持つインサイトの調査を綿密に行う必要がありました。
そのおかげで、「日々の小さなもやもやをこまめにケアしたい」というインサイトを発見しました。これと爽健美茶の「ちょっと気持ちを前向きにしてくれる」というコンセプトがフィットすることに気づき、情緒価値として積極的に打ち出しました。
二つ目がパッケージデザインの刷新でした。多くの方にリニューアルしたことに気づいてもらうためには、大きく刷新する必要があります。しかし、変える幅のバランスが非常に難しかったです。最初はグリーンとホワイトを使わない案も考えたのですが、現在愛飲いただいている方から「お店で見つけられない」「イメージと全く違う」という声が挙がったこともあり、今のデザインに絞り込みました。
三つ目が社内の合意形成でした。当社にはお茶以外にも沢山のブランドがある中で「なぜ今、爽健美茶にマーケティング投資をするのか」といった異論もありました。そのため社内はもちろんのこと、関連会社も含めて、1年以上前からリニューアルの意義を伝えました。数字の面だけではなく、早い段階でパッケージイメージを見せるなどして説明していくことで、最終的にはチーム全員が爽健美茶を再活性化したい思いで取り組むことができました。
顧客コミュニケーションのアイデアを千本ノックで模索
吉見:チョコパイが新しくなったことにお客様に気付いてもらうためのコミュニケーションにはとても苦心しました。ブランドコピーである「まぁるい幸せ」を軸に、リニューアルを打ち出していく方法をチーム全員で考えました。その際は、千本ノックのような感じで、アイデアをできる限り出していきました。加えて、単発で話題が終わってしまわないように、リニューアル後も継続的に様々な切り口でリリースを出すことで、チョコパイに気付いてもらえるように工夫しました。
乙幡:コミュニケーションにおけるアイデア出しは外注することもできたと思いますが、それをせずに社内で考えたのはなぜですか。
吉見:複数のブランドを抱えるメーカーは、当然、ブランドごとに広告投資の予算を配分する必要があります。今回、チョコパイに関しては、できるだけ自前でやっていこうという会社の方針がありました。
それに、1年間かけて熱い思いを込めてリニューアルをしてきました。だからこそ、チーム全体でコミュニケーションの部分もしっかり行い、多くのお客様に気づいてもらえるように頑張りました。
乙幡:千本ノックまでしてリニューアルに取り組んだ背景には、どのような思いがありましたか。
吉見:お客様からの声を聞くと、我々が思っている以上に“チョコパイ愛”に溢れているファンが沢山いることに気づきました。その価値をより多くの人に伝えたいという思いが根底にありました。
乙幡:ブランドに対して妄信することなく、お客様の声を聞いて「本当はどう思っているのか」を知ることは大切ですね。本日はありがとうございました。