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MarkeZine Day 2023 Autumn

脱・イメージ先行のZ世代像  調査でわかった「勘違い」と「細分化」の重要性

カギになるのは「全体最適化からの脱却」と「個別最適化の実現」

 六つの視点で見た調査結果を踏まえ、橋本氏はZ世代を紐解く上で留意すべき二つのポイントを解説した。

 一つ目が、やはり「世代ひとくくり」のイメージをうのみにしてはいけないということ。Z世代の特徴とされることが実は「時代としての特徴」であったり、事実ではあっても反対層も同じぐらい存在していたりすることを念頭に置いて分析をすべきだと言う。

 二つ目は、世代ではなく「個人」を見ること。調査におけるフォーカスグループの結果を見ても、世代の特徴より少数派の特徴を持つ個人が圧倒的に多い事実を橋本氏は指摘する。ニッチな趣味であってもSNSなどによって仲間を見つけやすくなったことや、世の中が多様な考え方に寛容になってきている変化が要因として挙がると橋本氏は言う。

 橋本氏はビジネスにおいてZ世代を考える際には、ここまでの要素に加えてグローバル化もかけ合わせた、“Z世代×国・都市・収入階層”という細分化された考察が必須になると言う。

 企業は今後、Z世代への理解において何に取り組むべきなのだろうか。「全体最適化からの脱却」と「個別最適化の実現」がカギになると橋本氏は語る。

「似た特徴を持つ人をある程度大きなセグメントに分けてソリューションを提供するといった従来のやり方だと通用しない世の中になっていきます。消費者ニーズの多様性を受け入れて、個人レベルの情報をリアルタイムで分析しながら、一人ひとりのニーズに寄り添ったソリューションを提供することが重要になります」(橋本氏)

 その実現に向けては、情報収集とその活用を目的に「テクノロジー環境の整備」と「仕組み化」が必要だと橋本氏は述べる。

 情報収集の対象はモバイル、SNS、IoTなどに拡大して膨大なデータが取れるようになり、それらのデータの処理もAIなどによって高度化した。こうしたテクノロジーの環境によって、リアルタイム性の高い個別最適ソリューションが現在実現しつつある。個人に合わせた「コンシェルジュサービス」の提供はその一例として挙がる。

 このように、経営判断や市場分析、顧客インサイトの発見などにデータを活用し、ソリューションを進化させるために、「企業は十分なIT環境を企業ごとに用意することが重要」と橋本氏は説明した。

情報中心のエコシステムの構築でコスト削減を実現

 収集したデータを基に特定の目的を持って十分な分析を行うためには「自社の情報を中心としたエコシステムの構築=仕組み化」が重要になると橋本氏は説明する。

 この仕組み化では、自社が保有する情報と外部にある情報の組み合わせによって「情報の網羅性」が高められる。そのために、各企業が取り組むべきことは大きく分けて二つあると言う。一つ目が「情報収集とその公開を目的とした製品開発」であり、二つ目が「情報の共有化に向けた取り組み」だ。

 メーカーはIoTを意識した製品開発を行い、そこで集まってきた情報を第三者にも公開(API公開など)することで、情報を中心としたエコシステムの形成につながる。こうすることで、自社製品の差別化と顧客管理の低コスト化を実現することが可能になる。

 ただ、1社だけで収集できる情報には制限がある。

「たとえば、一人の消費者像を完全に理解するためには店舗での購買データだけでなく、ECサイトやSNSなどあらゆるチャネルでの行動を把握する必要があります。そのためにも、自社で持っている情報を他社と組み合わせて拡充していくことが必要になっていきます。それらをスムーズに行うためにもデータ活用の仕組み化が重要になってくると考えています」(橋本氏)

 橋本氏は最後に「今後は、情報を持っている企業が勝つ」と強調した。今回、調査データによって明らかにした「特徴的な個人の集団」であるZ世代への理解を、データによって十分に深めることで意外な市場が見つかるかもしないとセッションを締めくくった。

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/11/27 08:30 https://markezine.jp/article/detail/43617

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