二分化された結果から分析するZ世代の価値観
同社の調査データを活用し、橋本氏はZ世代に対する世間一般のイメージと実態との乖離を、六つの視点から明らかにした。
一つ目が「消費への姿勢」だ。Z世代の3割以上が消費の際にブランドにはこだわらず「価格」を最も重視していることが調査からわかる。またそもそも消費はせずに預貯金に回すという保守層も約2割存在している。
だが、これはY世代でも同様の結果が得られるため、世代での特徴というよりも現在の世の中の特徴として捉えるべきだと橋本氏は語る。加えて、趣味や推し活、ファッションなど”好きなコト”へ積極的に消費する層が30.4%いる。預貯金を行う保守層が19.2%であることを考えると保守的な層以上に積極的な層が多くいることがデータよりわかる。
二つ目が「サステナビリティ」について。Z世代のSDGsやサステナビリティへの認知・理解度は、6〜7割と高い水準にある。だが、実際に消費行動で意識している層は、全体の8.8%となる。これもY世代とほぼ同じ結果(8.4%)でこちらも世代的な特徴として捉えることは難しいと橋本氏は説明する。
今後の行動意欲については、「今後積極的に取り組みたい」という層が全体の4割超となったが、「自分のライフスタイルを大事にしたい」という無関心層もほぼ同数が存在するとわかった。
「Z世代はサステナブルな行動に関心を持っている層だと一般的には言われていますが、実際には完全に二分されていると見られます」(橋本氏)
企業や一般からの発信を重要視
ただ、三つ目の「食」の領域では、Y世代と比較して明確に差が見られた部分もあると橋本氏は語る。
「食材の領域では大きな特徴が見られました。代替肉と昆虫食を積極的に摂取する層は全体の12%と8%で、Y世代と比較して4.2ptと2.2pt高い結果でした。しかし、関心層に目を向けると代替肉は両世代とも約40%でほぼ変わりませんでしたが、昆虫食は40.0%となり、Y世代よりも約14pt高くなっていました」(橋本氏)
四つ目が「コミュニケーション」。人とのコミュニケーションや情報収集などでは、SNSが67.6%と大きな影響力を持っていると橋本氏。その傾向は、購買プロセスのメディア活用でも同様の結果となった。また、彼らがSNS活用の際に「最も重視している情報」についても着目すべきだと橋本氏は語る。
「世間的には“インフルエンサーからの情報”を最も重視していると思われていますが、実際には“企業からのダイレクトな情報”と“一般からの投稿”をより重視していることがわかりました」(橋本氏)
一方、SNS以外の「テクノロジー」に目を向けてみるとZ世代の受容性は、あまり高くないと橋本氏は語った。メタバースやバーチャルショッピング、ChatGPTの利用率はY世代とほぼ同じものの、仮想通貨の利用率はY世代の半分程度となった。また、それらの利用用途に関しても、Z世代に比べてY世代のほうがより多岐にわたると言う。
最後に、「遊び・好きな過ごし方」を見ると、顕著にZ世代としての特徴が見られたと橋本氏は言う。
「『推し活』や『オタ活』を行う層は全体のY世代では全体の約4割に対して、Z世代では約7割にも達しており、その対象は、アイドル・歌手がトップを占めているのが特徴的です。しかし、一般的にZ世代は韓国アイドルへの憧れが非常に強いと思われているものの、実際には日本のアイドルへの支持が最も高く、次が韓国のアイドルとなっていることがわかりました」(橋本氏)